【現場から現場へ】
[学生 MESSAGE] 社会福祉援助技術実習
社会福祉援助技術現場実習を終えて
通信教育部社会福祉学科 佐藤 雅子
このたび,2月から3月上旬にかけての23日間の現場実習を無事終えることができました。年度末でお忙しい時期に私を受け入れてくださった,社会福祉法人特別区人事?厚生事務組合社会福祉事業団様そして職員の皆様に感謝申し上げたい気持ちで一杯です。特に実習担当をしてくださいました職員の方には,ご尽力いただき,通常,行われていない夜勤の消灯時間までの体験や,数々の面談等のプライバシーに関わる場面に同席させていただけるようにご配慮いただき,学ぶことも想像以上であり,充実した毎日を送らせていただけましたことに深く感謝いたします。
1 実習準備と実習先の概要
実習開始2カ月前の昨年12月に,実習前のオリエンテーションの日を設けていただいたので,その日に間に合うよう実習計画案を送付いたしました。オリエンテーションでは,施設の概要についてのしおりと,実習担当者作成の実習の手引きをいただき,その説明とともに,計画案と,持参した課題ノートの添削(実習期間中に可能?不可能?要検討など)も受けることができました。また,いただいた手引きには参考図書一覧も付けてくださったので,実習前に学習して臨むことができました。
生活保護法の中の更生施設を実習機関に選んだ理由は,現代社会の問題に敏感でなくてはならない社会福祉士を目指すための実習先として,やりがいのある機関であるということと,年越し村や派遣切り?格差社会を考えたときに「更生施設は社会福祉の第一線である」という考えも大きかったからです。
実習先の事業団は,東京都の23区(特別区)が共同で設置する更生施設?宿所提供施設?宿泊所を受託運営することを目的として平成2年に設立された社会福祉法人で,現在,更生施設5施設,宿所提供施設5施設と宿泊所3施設を経営しています。また,東京都と23区の協定に基づく路上生活者対策事業の緊急一時保護センター?巡回相談センター?自立支援センターも受託経営しており,さらには包括的施設支援事業「バックアップセンター」および「サポートセンター事務組合」の事業にも参画しています。この度,私を実習で受け入れてくださったのは,この中の更生施設で,地域生活に移行するまでの通過施設です。
この更生施設では,入所者に対しアセスメントを行い,本人の意向に沿った自立支援プログラムを指導員が作成し,目標に沿って地域社会に移行できるよう支援しています。そのため,就労支援,借り上げアパート等の確保とその後の生活の支援のための通所事業も行っています。入所者の年齢層は20代後半から80歳位と幅広く,近年では若者の入所が増加傾向にあります。入所者の特徴としては,精神疾患?嗜癖(アディクション)問題?多重債務?軽度?境界域知的障害者の方の利用がほとんどであり,完全就労は困難で,半就労を目指しつつ,病状の安定化?嗜癖問題の解決のため,バックアップセンターと連携し,臨床心理士による心理相談を通し,必要であれば,手帳の交付の支援を行い,生活しやすい状況を整える支援を行っています。
2 実習の達成課題と内容
今回の実習の達成課題として,保健センターや障害者就労支援センター?嗜癖問題に取り組むクリニックやAA(アルコホーリクス?アノニマス;アルコール依存症のための自助グループ)等のミーティング施設との連携や利用者の特性を知る,そして施設生活から地域生活を送れるようになるための過程を学び,一人の入所者の方へのアセスメントに基づく,ケアプラン作成などの目標を立てました。
実習では,喫煙所等で入所者とコミュニケーションを図ること(女性実習生は,職員の目の届く範囲での行動のみ許可。それ以外の場所は,男性職員同行の元,行動することで安全確保がなされていました)や,施設から地域生活に移行する前段階の借上げアパート等への訪問,地域生活へ移行した方への訪問同行等を通し,アセスメント?モニタリングを行う機会を得ました。また,嗜癖問題に苦しむ方々が多いことから,その問題に取り組むクリニックのデイケアへ一日研修に行かせてもらい,テーマに沿って話し合うミーティングに参加する機会も得ました。さらには,デイケアとはまた違った,JCCA(日本カトリック依存症者のための会)のミーティングにも1日研修に行かせていただきました。
入所は福祉事務所からの依頼ではありますが,本人が納得して入所できるよう,事前に施設見学を行い,職員がルール等の説明を行います。今回は,その場面にも同席をさせていただきました。入所中に就労できそうな能力のある人は,当施設に職業相談員が配置されているため,連携プレーで,就労したい人の支援にあたっていました。就労も,自分の心身に見合わないものを希望する人もいるため,指導員が気付きを与えるような面接や,話だけでは納得できない人には,まずは挑戦させてみる支援も行われていました。
入所する前と入所してからでは,衣食住が安定するためか,顔つきが生き生きと変わっていくのがよくわかりました。ただ,就労に移行していく段階で,やはり,生活のしづらさの中を生きている彼らは,前述した「心身に見合わない就労形態」を選んでしまうと,たちまち生活のリズムが狂い,嗜癖問題へスリップしてしまう傾向にあるようでした。
路上生活者対策事業の緊急一時保護センターでアセスメントの結果,「自立支援センターで猛烈に就職活動が行える」と判断された人とは違って,更生施設への入所者は,心身の病のために,半就労者がほとんどで,ストレスの少ない短時間の就労や,掃除のスタッフとして短時間働くことが多いのが現状です。そういったことから,法人内のみではなく,保健センターの保健師と連携し,作業所につなげ,東京障害者職業センターでの相談専門員による能力評価や,必要に応じてのジョブコーチ派遣などが行われていることを,同行させていただいて学ぶことができました。
法人内のバックアップセンターでは,地域生活に移行する際,他の受託団体の社会福祉士らが,アパートの契約手続きの際に活躍し,地域移行した後も,定期的に訪問?相談に応じており,引っ越し間近の方と社会福祉士との面談にも同席の機会をいただきました。また,自立支援計画書作成のためのアセスメントの面談にも同席をさせていただき,ケアプラン作成とご本人にプランを提示しながら説明し,担当職員も,傍で見て助言もしてくださり,同意を得るという体験もさせていただきました。
3 実習先での刺激?事後指導での感動
法人内の他の施設の見学や,通所事業の行事での外出,入所者との外出行事や音楽療法への参加もさせていただき,本当に毎日が充実していて,あっという間に実習が終わってしまったという感じがしています。とても大切な思い出になり,尊敬すべき社会福祉士の方々との出会いもありました。実習先では,テーマを決めて,講師を招いての勉強会が行われていて,そこに出席させていただくこともでき,大変勉強になりました。その際,法人内の別の施設の社会福祉士の方も勉強のために参加されていたのが,とても印象的でした。学び続ける姿勢に感動をしました。その方は,臨床心理士を目指しているとのことで,さらに感心いたしました。
実習以外で飲みに連れて行ってもらい,ご馳走にまでなりました(何年ぶりかで「はしご」もいたしました)。その場でも,資格取得後も学び続ける職員の姿勢に感動いたしましたし,精神保健福祉士の資格も同時に取得している方も多いようです。やはり,心理学的アプローチが欠かせないからなのだと思いました。変えられるのは,自分自身と未来だけであるのだから,さまざまなアディクション(嗜癖)に翻弄される人がいるとしても,こちらが相手を変えようとするのではなく,時には相手が変わりたいと思うまで待つことや,そう思えるようになるように,環境を変えたりする支援を行うことが大事なのだと感じました。
自分は試験向きじゃないから,大学卒業が大目標と思って参りましたが,素晴らしい方々の姿を見せていただいたことで,逃げずに挑戦して資格を得ようという決意が芽生えました。そして心理学的なアプローチを行えるように,学び続けて,ストレングスに働きかけ続ける,プロとしてのソーシャルワーカーになれるように努め,今回お世話になった職員の皆さんへの感謝の気持ちを形で表したいと思います。
5月22日に行われた事後指導で,田中治和先生のクラスでは,先生の素晴らしい講義と素晴らしい学生の皆さんと接することができ,特にグループワークでお世話になったAチーム(特攻野郎?)の皆さんとのディスカッションがこれまでの様々な講義でのグループワークの中でも,最後の授業にふさわしい内容で,学び続けることができたことに感動いたしました。この場をおかりしまして,感謝とお礼を述べたいと思います。皆で合格しましょうね!!
レポート提出に悩む方々,実習を始められる方にも,同じく学ぶ仲間との出会いや,知的探究心の塊の授業,素敵な実習先?そして職員の方々との出会いと,学ぶ喜びの再発見があることをお祈りしています。
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