私の専門は言語学という学問です。人間の脳には生物学的特徴として、言語を獲得し使用することを可能にする「言語能力」が備わっています。言語学は、この「言語能力」が一体どのようなものであるか追究することで、人間のこころ（human mind）のメカニズムを解明しようとする学問です。私は特に統語論という、文や文法の仕組みを考える分野の研究をしています。私の母語である日本語と、英語を含めたさまざまな言語のデータを比較することで、人間言語の特性を明らかにしようとしています。担当科目は、英語学概論、英語音声学、英語統語論、教育英語学など、教育学科中等教育専攻英語科コースの学生を対象とした専門科目を主に担当しています。

 私は中学時代に英語が好きになり、英語教員になるために大学に進学しました。教員をめざしていた私が研究者の道へ進んだきっかけは、大学3年生の授業で出会った「生成文法」です。生成文法はアメリカの言語学者ノーム?チョムスキー氏が約70年前に提唱した言語理論で、言語研究に自然科学の手法を取り入れることで言語の普遍性と多様性を捉えようという企てです。大学のゼミの中で、英語という個別言語の特徴だけでなく、英語や日本語を含めたさまざまな言語に共通する法則をこの理論のもとで捉えようとする研究に触れ、その分析の美しさと言語の奥深さに魅了されました。大学生の頃、生成文法の理論を理解するのはとても難しかったのですが、だからこそもっと理解したいと思い大学院に進学し、その後、より言語学を専門的に学びたいと思い米国の大学院に進学しました。このように言語の世界に夢中になり、もっと知りたいという思いに突き動かされて、気が付けば研究者の道に入っていました。 

 言語学は英語教育とは直接的には関係のない学問です。しかし、言語学を学ぶことで語学教師にとって奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】なことばに関する知識を得ることができます。言語学の授業では、日本語と外国語との比較を通してその共通点と相違点を探ります。私たちは普段当たり前のように日本語を使っていますが、他言語との比較という観点から日本語をよくよく観察してみると、これまで気付くことがなかったさまざまな法則が浮かびあがります。同様に、英語という言語をこれまで学校で習ってきた「英文法」という枠を超えて、言語学の観点から観察してみると、日本語との共通点や英語独自の特徴が見えてきます。このような言語に対する視点は、将来英語や日本語（あるいは国語）を教える立場になる人にとって必要不可欠なものとなるでしょう。

 何事も一度自分の頭で考える習慣を付けてほしいと思っています。授業で先生が説明したことや教科書の内容、ネット上での情報などを鵜呑みにするのではなく、その内容を自分自身でよく考え、調べ、吟味することが大事です。「なぜ」「どうして」と問う癖を付け、自分で考えた上で他者と議論することで、考えをより深めていってほしいと思います。

 本学の教育学部中等教育専攻の英語科コースでは、英語教員になるために必要となる英語学、英文学、英語教育、異文化理解を専門的に学べるだけでなく、特別支援教育についても学修することができます。教員に多様なスキルが求められる現代では、このような学びは非常に有益です。一緒に本学で学んでみませんか？