【現場から現場へ】
[関連施設紹介]
せんだんの杜のサテライトケア構想(1)
中山の家1?中山の家2
せんだんの杜杜長
中里 仁
サテライトケア構想
前号も含め,これまでも何度か東北福祉会の「理念」について書いてきましたが,今回からご紹介する「せんだんの杜なかやま」(中山小学校地区)における6つの事業も,法人の理念に掲げてあるところの「新しい地域福祉サービスと,住民参加のまちづくりを進め,誰もが地域のなかで,その人らしく普通に暮らすための支援を行なう」を受け,平成12年9月から進められてきたものです。
具体的には,「せんだんの杜」(吉成小学校区)のサービス提供範囲である仙台市青葉区の6つの小学校区(中山?川平?貝ケ森?桜ケ丘?北仙台?国見)に,介護に関する相談のほか,子育てや,障がい者の生活?就労支援などを含む総合相談?支援センター,ホームヘルプ,デイサービス,ショートステイ,グループホーム機能などを備えた小規模多機能型の「サブセンター」を設け,その周辺に「サテライト」を置くものです。
サテライトは,地域の集会場や居酒屋,スーパーマーケット,市民センターなど比較的に高齢者の方が集まりやすい場所を活用し,そこで週に何回かデイサービスやお茶飲み会,いきいきふれあいサロンなどの集いを「地域住民の協力を得ながら行なう」という構想です。
通って,泊まって,自宅にも行き,住むことも
「中山の家」は,先に紹介したサテライトケア構想の「サブセンター」のひとつです。ただし,センターといっても住宅街の一角にある普通の「民家」を借り上げ,事業所指定を受けたものですので,よほど注意して表札を見ない限り通り過ぎてしまいます。
「中山の家1」は,部屋数5部屋の平屋建て,築40年近く経つ古い民家ですが,痴呆症の方には,逆にその古さが「馴染みや親しみ」の空間となり,落ち着いて利用されています。玄関をあがってすぐの8畳間が介護保険対応の訪問介護事業所になっており,地域のニーズを受け,ここからホームヘルパーを派遣しています。その隣の襖つづきの3部屋が「痴呆性高齢者」を対象とした通所介護事業所(デイサービス)で,月曜から金曜まで,1日平均6?7人の方が利用されています。最後の一部屋は,介護保険外の自主事業として,高齢者の「宿泊」もお受けしています。
そして,そのすぐ向かい側にあるのが「中山の家2」です。こちらは,まだ築数年の新しい家で,1階に4部屋,2階に2部屋の合計6部屋。基本的には「中山の家1」の機能と同じく,訪問介護事業(ヘルパー派遣),「一般」の高齢者を対象とした通所介護事業(デイサービス),介護保険外の宿泊をお受けしていますが,それに加え,これまた介護保険外の自主事業になってしまいますが,どうしてもここで暮らしたいというニーズに対応する「居住」サービスも用意しております。「通って,泊まって,自宅にも行き,住むこともできる」??それが中山の家なのです。
「利用する側」の立場でサービスを考える
介護保険制度が施行され3年。当初の事務的な混乱や,現在もなお引き続き,いくつかの課題を残してはおりますが,措置時代の高齢者福祉サービスに対する考え方と,介護保険制度に移行した後との考え方を比較して私が一番に感じることは,「縦割りの制度ありき」的な発想から「横断的な利用者ありき」の発想へと行政の考え方が転換し,結果的に「利用する側」の立場で考えられたサービスが制度として成り立つ「土壌」が生まれつつあるのではないかという点です。措置の時代であれば,サテライトケアの構想や地域分散型の小規模多機能事業の発想も生まれにくかったであろうし,ましてやそれを現実化することはかなりの困難を要したと思います。
でも,単純に考えてみても「利用者のニーズ」があってこそニーズに答える「サービス」が生まれるわけですから,これまでのサービスに対する考え方そのものに誤りがあったわけです。せんだんの杜のサテライトケア構想も,この地域住民,利用者のニーズによって生まれてきたものなのです。もっと単純にいえば,私が年をとったとき「やっと手に入れた我が家」の近くに「通って,泊まって,自宅にも来てくれて,いざとなったら住むことも出来る」そんなサービスがあったならどんなにも「便利」か??すべてはそこに行き着くのではないのでしょうか。