【学習サポート】
[精神保健?精神医学]
通信教育で心に留めておいて欲しいこと
教授
松江 克彦
◆1 前置き──通信教育の学生諸君は頑張っている
レポートの添削を通して感じることは,皆さんがレポート作成に真剣に取り組んでいる様子がいつも感じられることです。これは添削者にとってとてもうれしいことです。精神保健や精神医学は専門用語も多いはずなのに,ほとんどの学生がほぼ正確に理解したうえで作成しているのには感心します。また,乱雑な字でレポートを作成する人もほとんどいず,むしろ,正確を期するために修正液を用いて書き直す人も多くみられます。たまには消した箇所に書き込むのを忘れているのも見掛けますが,むしろ微笑ましい感じさえ受けるほどです。
そのように多くの学生さんが忙しい仕事の合間を縫って作成していることを考えると,それだけで評価したくなることもありますが,そこは教育に携わる者の悲しい性(さが)で,やはり不完全なところを探してはコメントしてしまいます。だから,時に厳しいコメントがあっても,その他の部分で多いに感心していることを忘れないでください。以上のことを承知のうえで,通信教育において心に留めておいて欲しいことを述べていきます。
◆2 テキストに頼りがちな学生へ
テキストに頼ることはなにも悪いことではありません。そのためにテキストを指定したりしているわけですから。ただ,指定以外のテキストを主に参考にする場合は,複数のテキストを読むことを勧めます。理由としては,精神保健におけるライフサイクルの区分や,精神医学における疾患分類がテキスト間で異なっていることがままあるからです(指定したテキストは現在の標準的なものを選択しています)。
したがって,指定以外のテキスト一冊に頼ると,現在では偏った知識を習得する可能性があるので,複数のテキストで確認することによってそのような危険を回避できます。できれば指定のテキストでの確認が一番良いのですが……。是非実行してみてください。
◆3 課題の問いに対して自己の経験を重視する学生へ
通信教育の学生が社会で働いていて経験が豊かであったり,マスメディアの報道に対する関心の高い人が多いことは,レポート作成で自らの経験や見聞からのエピソードや意見の記述が豊富であることからわかります。それは生きた知識を身につけるうえで大切な要素だと思います。ただ,そのような経験を重視するあまり,独断に陥ったり,自らの意見の信憑性を正確に位置づける努力が希薄な例もしばしば見受けられます。
そのような場合,通信で得た知識と自らの考えを充分擦り合わせる思考作業を行うことは,より深い生きた知識や思考法を身につけるうえでとても奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】なことです。また社会的経験や意見が豊富であることは,高校から大学と進学してきた学生たちより有利な点でもあると思うので,是非そのような作業をすることで実りある学習態度を確立するようにしてください。
◆4 レポートの書式について
レポートに書かれている内容は素晴らしいのに,レポート作成上の書式にあまり気を使わないため損をしている人も多いと思います。たとえば,段落の取り方,適切な句読点の付け方などは,素晴らしい内容を他の人に正確に伝えるうえで必要なことです。是非意識的にそれらを考慮して作成するようにしましょう。また,参考図書や引用文献などは,レポートの末尾に記述するようにしてください(指定のテキストも含めて)。その場合,それらの図書や文献に番号を付けて,文中の引用した箇所にその番号を付けるようにすると一層わかりやすく,メリハリのあるレポートになるでしょう。これも是非実行してください。
◆5 試験の時には学習内容を忘れてはいませんか?
これはかなりの学生に言えることです。特に課題の理解や構成の優れたレポートを提出した学生が,試験のときに同じような課題にうまく答えることができないことに出くわしたときには,少なからずがっかりします。忘れることはよくあることですが,だからといって,受験のように試験のときまでは忘れないようにしよう,と努力している様子を想像するのも何か痛々しい感じがします。
問題は,活用されない知識は忘れやすいということです。そこで,学習した知識や自らの意見を持って,周囲で起こる出来事や,新聞その他のメディアの報道などに意識的に関心を持つようにし,それらについて自分はどのように考えるかという習慣を身につけることが大切です。知識は考えるための基礎的なものであり,知識自体は同じでも,それを活用することによってその人独自の考え方や視点を確立していくことになるのです。だから,忘れないようにするのではなく,活用することで身に付けて欲しいものです。試験はその結果と考えるようにしてください。
◆6 さいごに
前置きで,通信教育の学生諸君は頑張っている,と書きながら,注意事項の張り紙みたいな内容になってしまったのではと,ちょっと心配になりました。そこで,前置きに戻って自分の感想を読み直してみたところ,レポートでお目にかかっている諸君の健闘ぶりがまた蘇ってきたところなので,「それでもやっぱり,諸君は頑張っている!」と声を大にして言いたいと思います。頑張ってください。