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VOL.47 NOVEMBER 2007

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[社会福祉援助技術現場実習] 福祉を学んで……

通信教育部 社会福祉学科 9月卒業生 盧 智美

◆1 社会福祉士を目指すまでのいきさつと勉強法について

 私が社会福祉士の資格を取ろうと考えた理由は2つある。まず一つ目に今まで私の職は福祉とはまったく無縁であったが,人生の後半は人のためになる仕事をしたいと思ったことがきっかけである。また,結婚後も働く際に有利になる資格と考えて勉強を始めた。
 私は平成17年の10月生で入学し,2年間で卒業することを目標にスケジュールを立てた。大学の説明では,2年で卒業するのは相当な覚悟が必要であるとのことであったが,今振り返ってみると実際にレポート,科目修了試験,スクーリングなどに追われる毎日であった。仕事と勉強の両立を果たすためには,プライベートの時間を大幅に削る覚悟が必要である。勉強方法としては,予備知識のない私には学校からのテキストは比較的難しいものが多く理解しにくいと感じられたので,まずは市販の簡単な参考書から勉強をはじめ,浅く広く知識の土台を築いた後にテーマごとに深く理解を深める学習を行った。また,近くの自治体等を訪ねて福祉に関するチラシやパンフレットを入手し,自分の学習内容と現実の政策を結びつける作業もよい勉強になると思う。

◆2 実習について

 私は実習先として児童相談所と児童養護施設を選ぶこととした。その理由は,以前知人が病気になりその子どもを預かった経験からである。その家族は夫婦間の仲が悪く,家庭環境が不安定であった。その子どもとの2カ月間の生活を通じ,子どもが成長する過程で生活している環境が大きくその子に関わってくることを実感させられた。この経験から私はこれからの日本を背負っていく子どもたちに健全な環境を提供できるように自分の力を発揮したいと考え,児童関係の実習先を選択した。実習の目標としては,児童福祉の現状を把握し,問題点を探って改善策を考察し,今後の自分の福祉職としての目標を見つけ出すこととした。
 実習内容であるが,児童相談所では各専門員からの業務内容の説明などの座学が多かった。また,併設されている一時保護施設の児童と関わり,関係施設への見学等も行った。
 養護施設では主に洗濯,掃除,学習指導等の児童の生活面での援助が中心であった。また児童のケース記録も何件か見せていただき,実際にその児童とふれあい,行動観察する機会を得た。虐待連鎖という言葉をよく耳にするが,子を見ていると大体親がどのような人物なのかを想像できる。例えば,喧嘩をした際に友人の顔を湯船に沈めたり,一緒にいる友人に正座させて身動きしたら怒鳴り散らしたりするなどの行動を取る子がいる。そのような子の記録を調べてみると,幼少期に親から同じ身体虐待を受けている。一方,ネグレクトを受けた子どもたちは愛着障害から身体的コミュニュケーションを強く求め,母性的なものを感じるのか胸に対する関心が高かった。また親からきちんと食事を与えられないなどの栄養不足から,身体や知能等の成長の遅れも目立った。
 施設の子どもたちは概して情緒不安定であり,穏やかに笑っていたかと思うと急に荒々しい言葉使いになるなど,多面性を見せる。また児童相談所の一時保護所の児童は,養護施設の児童と比べてまだ保護したての子どもたちなので,精神安定剤を服用している子,リストカットを繰り返す子などさらに精神的に不安定な児童が多かった。興奮させない,刺激しない,刃物は渡さない,中学生以上の異性の児童には触れないようにするなどの注意点が多くあり,対応が難しかった。実習の反省点として,実習の時間が短いことから子どもに嫌われることを恐れてしまい,子どもたちと本当の信頼関係を築くことができなかったことが挙げられる。

◆3 実習に向けての心構え

 社会人は各々の職歴からそれぞれの経験や知識を持っているが,実習の現場においては先入観を持つことなくまっさらな気持ちで臨むことが必要である。その一方で,実習先からは職歴に関連した見方から見解を問われることもあるので,実習中はプロとしての心構えを持つことも必要である。また自分がなぜこの実習先を選び,何を学び,どう活かしていくことができるのかを常に念頭において実習に向かうことが必要であると考える。

◆4 実習を通して

 この2箇所での実習を通し,現場体験により包括的に児童福祉について学ぶことができたが,児童福祉が抱える問題は想像以上に複雑であることもあわせて理解した。子どもたちの印象とすると,言葉は悪いが,通常の家庭の子どもと違い精神的に“問題”をかかえている子が多かったように感じる。どの施設でも心理的な専門家の不足が問題となっている。今後,自分でも多くの事例に触れ,経験と知識を積み,特に心理面での勉強を深めていきたいと考える。
 また施設の子どもたちの食育についてみると,家庭環境のために,幼児期からパンや即席麺ばかり食している傾向がある。通常の家庭の子どもたちは母のうしろ姿を見ながら,お手伝いしながら,料理や家庭の味を覚えていく。だが施設の子どもたちは施設に入所後も実際に調理をする機会?見る機会はほとんどなくそのまま成長していってしまうのが現状である。養護施設の方の話でも,施設を出た後に彼らが自炊できるかがとても心配であるとのことであった。食生活と心理状態とは密接な関係があると思う。料理を作ったことのない子どもたちが結婚して家庭を持った後,家族に栄養バランスの取れた食事を提供できなければ,大きく考えればそれもまた虐待?非行を生む要因となるのではないだろうか。
 今,私は食関係の職に就いているので,今後施設の子どもたちを対象に,自立生活に向けた「基本のお料理」などの料理教室を開催していきたいと考えている。子どもたちが将来健全な家庭を築けるよう,食育の面から児童福祉に携わっていきたい。

◆5 通信教育を振り返って

 福祉職に身を置いたことのない素人の私にとって,勉強を始めた時はとても不安な毎日であった。だが,各先生方の熱心なご指導,また丁寧な通信教育部の職員の方のおかげで,通信教育でも諦めることなく,最後までとても楽しく学ぶことができた。学生の方は何か心配事があったら一人で悩まずに,まずは学校に相談することをお勧めする。
 この2年間,福祉の学びを通して自分自身の人生を見直すことができ,人間観が養われ,心の幅が広がったように思う。最後に,東北福祉大を選び勉強できたことをとても嬉しく思っています。先生方,事務局の方々,本当にありがとうございました。

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