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VOL.56 NOVEMBER 2008

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[障害者福祉論] 利己主義のすすめ

担当講師 横山 英史

 みなさんが書かれたレポートを読んでいると,一つのことがらについてのものの見方がほんとうに人さまざまであるということに驚かされます。人間の悪いクセというのでしょうか,つい,それらをラベリングしてわかったつもりになっても,さらに読み進めると,そんなものでは到底片づけることのできない,みなさんの多様な価値観や背景,思いなどにふれて,ときにぎょっとすることもあります。ぎょっとするというのはつまり,知的な好奇心を刺激される,楽しい瞬間ということです。

◆進化と利他的行為

 ところで,福祉という分野に限らずとも,いまもむかしも相変わらず,利他的であることに対する高い評価に比べて,利己的であることに対してはずいぶん厳しい世の中だなと感じます。

 むろん,自己を犠牲にして他者を助けるという利他的行為は,人間だけでなく,他の生きものの間にも認められる,価値あるものといえるでしょう。しかし,直接自己の利益に結びつかないかに見える利他的行為は「進化の謎」と言われているそうで,なぜそれが進化の過程で淘汰されずに残ったかについては,「情けは人のためならず」という言葉で説明できそうです。つまり,自己を犠牲にして他の個体を助けるという行為によって,結果的に,自己の遺伝子をより多く遺すことが可能になるからだというのです1)2)。言い換えれば,利他的行為によって他者が得る利益が他人事で終わるのではなく,自己の利益につながるものであったからこそ,利他的行為は生き残ってきたということになるでしょう。

◆真に利己的であるということ

 ミヒャエル?エンデ著『はてしない物語』のなかでは,「汝の欲することをなせ」という,簡単なような難しいような,印象的な言葉が登場します。主人公の少年バスチアンは,自らの記憶と引きかえに望みをかなえるメダルに書かれたこの言葉に対して,自らがほんとうに望んでいることが何なのか理解できず,授かった力を濫用してしまったため,破滅寸前まで追いつめられてしまいます。

 ほんとうに利己的であるということは,一般に思われているほど,そんな生やさしいものではないのかもしれません。はたして人は,真に自らが欲するところを,そんなに簡単に知ることができるものでしょうか。人は,どこにあるのかわからない自分自身の真意を求めて,煩悶を繰り返す生きものなのではないでしょうか。

 先ほどの進化の論理でいえば,生きものは,組織や集団のためでもなく,他者のためでもなく,自己の利益のために行動するというのが大前提であるということです。そして,多くの生きもののなかでも,とりわけ人間の行動は,環境や学習の影響を大きく受けると言われています。ならば,その本質や性質を理解し,利用し,それをどの方向に向けてやったら,いちばん無理なく,自己と他者の最大公約数の利益をめざすことができるのか,それを考えた方が合理的というものでしょう。

 私たちが,ほんとうに自分にとって利益となることが何なのかわからなくなってしまったら,つまり,ほんものの利己心の探求や追究をやめてしまったら,そのときには,利他心をも失うことになるのかもしれません。

◆「障害者」とは何か

 人間は,ほとんどの場合,自分の未来に何が待ちかまえているのか知ることはできません。「一寸先は闇」とはよく言ったものです。自分が年を取っていくということは,なんとなく予測できるかもしれませんが,疾病や事故に至っては予測不可能です。加えて,個々人がもつ特性という「障害」があります。運動の得意な人もいれば苦手な人もいますし,視力が良い悪いなど,五感の特徴も人それぞれです。ましてや,心理的側面に関しては,人は各々,分類不可能なほど多様な特性を備えていると言わなければなりません。これらはときに,社会生活のさまざまな場面で困難を引き起こし,そのストレスが,深刻な精神的身体的ダメージを生じさせてしまうこともあります。

 このように考えると,人は,潜在的には誰もが広義の障害者であるといえます。それが顕在化して,社会生活に支障を来すようになったとき,何らかの支援を受ける権利があることを明らかにするために,これを狭義の障害者とするわけです。障害者とは,そういう意味を表すラベル以外の何ものでもなく,従って,その人の人間性や本質とはまったく無関係なものであることも,自ずと理解されることでしょう。

 即ち,障害者の問題を考え,取り組むことは,「いつか」というよりも,いま直面している「障害」という自分の問題に取り組むことにほかならないのです。他人事でもなければ,利他的行為でもなく,自己の利益を考えること,つまり利己的行為そのものであるといえるのではないでしょうか。

 さて,どうですか。いま綴るその言葉は,あなたの気持ちやものの見方を,よく表していますか。書きあがったレポートを読んでみて,どうですか。あなたは,十分に満足できましたか。それならば,それでよいのです。

1)糸魚川直祐 第3章比較発達障害の心理 一番ヶ瀬康子監修 杉村省吾編著 障害者の心理(介護福祉ハンドブック50) 一橋出版 1999年 p38-49

2)今福道夫 第4章行動と適応戦略 糸魚川直祐,日高敏隆編著 ヒューマン?エソロジー(応用心理学講座11) 福村出版 1989年  p42-57

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