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2020/09/02

教育コラム:あたかも1つの教室にいるような学びをめざしてー「社会科の指導法」の実践ー

初等教育専攻 三浦和美 教授(小学校社会科教育)

オンライン授業でめざしたこと

感染症拡大に伴って、急遽5月中旬からオンライン授業が始まることとなりました。すぐさま取りかかったのは、オンラインの練習と「改訂版シラバス」作成でした。オンラインは教員同士で何度か練習する機会があり、練習の度ごとに必要なスキルを習得しました。これまで学生と向き合い、対面授業をよりよくすることに取り組んできた授業実践者から、たちまちICTを駆使する「近未来の授業実践者」へと変身していくことになりました。       

教科教育法で「社会科概論」に次いで2つ目の講義となる「社会科の指導法」は、学生が学習指導案(略案)を書き、模擬授業を実践するという実践的な学習内容であるため、それらをどのように学習として構成するのか悩みました。これまで行ってきたジグソー法を用いた教科書分析も模擬授業もこれまで通りで行うことはできないため、各自が行う方法とすること、それが最も大きなシラバス上の改訂でした。それでもこだわったのは、あたかも1つの教室にいるような学びの創出でした。

1つの教室にいるような授業を行うために

毎週月曜日1限と2限、GoogleMeetが始まる時間は緊張の連続でした。受講生55名、そして2コマ続き???そのような中でもあたかも1つの教室にいるようなオンライン授業を行うために以下のことを継続しました。
〇講義中は受講生一覧表を片手に発表の指名をし、学生とのやり取りを重視する
〇学生同士のやり取りはカメラ?マイクOFF(会話時のみ使用)の制限があるため、教員が発表者への意見を求めて共有する
〇講義初めの挨拶は学生が行う。また、終わりには感想を発表する
〇講義の感想は、昨年まで使用していたミニットペーパーではなく、GoogleMeetのチャット欄に書き、それを基に議論を行い、さらに学習を深める

こうして振り返ってみると、これらのことは対面授業で行ってきたことと何ら変わるものではないことでした。

学習指導案の添削は1つ1つの項目や文末が適切に書かれているかをオンライン上で確認しながら、学生自身がチェックしました。さらに、模擬授業の実施に当たっては、学生から「先生の授業が見たい」という要望が出て、話し合いの結果、「学生が1度模擬授業をしてから行う」こととなりました。少し抵抗したのですが、学生たちの熱意はオンラインからでも伝わってきました。学生と同じく1週間練習して授業(第6学年「長く続いた戦争と人びとのくらし」の導入)に臨みました。

講義の感想に見る学びの実現

第13回講義(模擬授業実施)の感想を紹介します。

〇今までは学習指導案の書き方も指導方法も全く分からなかった私が、まだまだではありますが、今では児童に寄り添った授業を考えることができるようになったのではないかと思います。デジタル化が進んでいる中で、デジタルのものを利用しながら、児童にとってより理解しやすい授業の仕方をこれからも学んでいきたいと思いました。

〇今回までの授業を通して社会科の指導だけに関わらず他の教科の指導にも通ずるものがあったのを改めて実感しました。どのように児童に対して問いかけや声掛けを行うべきかなどなかなか自分だけでは解決しづらい部分が解決する為に、自分で改めて考えたり、他の人の意見を聞いて吸収するなど様々な方法で学習を深められたなと思いました。

〇この「社会科の指導法」で教科書分析や指導案作成、模擬授業など、実際に授業を行う上で大切なことをたくさん学ぶことができた。何度もジグソー法にまとめることで前回の反省を改善し模擬授業に生かすことができてよかった。オンライン授業ということでいろいろ不便なこともあったが、指導法を学ぶことができてよかった。

〇10分の模擬授業持つか不安でしたが流れ的には良く運べたと思います。教科書分析からそうですが、自分だけの考えでなくて、先生も含め多くの学生の良い意見、考え、疑問をみれると自分に足りないところが見えてきました。これからは練習あるのみ、いろんな意見を取り入れつつ練度を高めたいです。

〇毎回の講義の内容が今の私自身の考えや意識を変えてくれるようなものがありとても楽しかったです。今日の講義での「1つのことに強くなると、すべてが強くなる」(有田和正先生)という言葉は心に刺さりました。これから自分自身が何をすればよいのか気づくことができました。これからも日々毎日の学びを大切にして過ごしていきたいです。

〇模擬授業は前回できなかったところを改善し、発問を考えながら授業を展開していくことができました。このGoogleMeetでの講義を通してでは、トラブルもありましたが、対面のように集中してできました。

学生の感想を読んでいくと当初目指した「あたかも1つの教室にいるような学び」は、予想以上に実現できたのではないかと思います。学生にいつも話していたのは、「このオンライン授業は苦しいものだと思いますが、決して無駄なことではありません。今回の学びがきっと皆さんの教員としての土台の体験となるはずです」ということでした。小学校教員をめざす学生たちの今後の学びと成長を期待したいと思います。

新しい生活様式に伴って求められた新しい授業様式。それでも大切にしなくてはならないのは、学生とともに1つの教室で学んでいく、そのリアリティのある学びではないかと考えています。

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