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【現場から現場へ】

[INTERVIEW] 精神保健福祉士の資格と仕事

(話し手)社会福祉学科 教授
遠藤 克子
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将来性ある資格といわれ,学生の関心も高い精神保健福祉士(PSW)。精神保健福祉士法では,精神障害者の「社会復帰に関する相談に応じ,助言,指導,日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行う」と規定されていますが,実際の業務は意外と知られていません。
ここでは,本学教授の遠藤克子先生(「精神保健福祉論Ⅰ?Ⅱ」など担当)に精神保健福祉士の資格と仕事について,お伺いしました。

Q.まず,精神保健福祉士が接する「精神障害者」とはどのような方でしょうか。

日本では「精神障害者」の方で,医学的には退院は可能だが行き場がないために「社会的入院」を余儀なくされている人々がたくさんいます。精神保健福祉士はその方々の退院を促進して,地域でふつうに生活できるための援助を行うための資格です。
医療職ではありませんので,病気を治療するといったことではありません。意外に思われるかもしれませんが,精神障害者が法的に身体障害者や知的障害者の方と同じ障害者として福祉の対象とされたのは平成5(1993)年の「障害者基本法」の成立以後です——この法律において「障害者」とは身体障害,知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため,長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう(第2条)と定義されています——。それまでは医療?保健の枠組が中心だったのです。そこに福祉的援助が必要ということが理解され,保健と福祉の領域にまたがる資格として制定されました。このような背景もありますので,平成10(1998)年に国家資格化された精神保健福祉士は,あくまでも社会福祉的な立場から精神障害者を援助することが求められています。
なお,精神保健福祉法では精神障害者を以下のように定義しています。
「精神障害者」とは「精神分裂病」(現在「統合失調症」と呼び名を変更する動きがあります),「精神作用物質による急性中毒又はその依存症」,「知的障害」,「精神病質」その他の精神疾患を有する者をいう。

Q.精神保健福祉士の主たる職場はどんなところがありますか。

精神病院や精神科?神経科のある病院,精神科クリニックで医師?看護師と連携して働いている人が多くいます。その他,公務員試験に合格して,保健所,精神保健福祉センターで働いている人もいます。また,退院した精神障害者に生活の場を与える「生活訓練施設」(援護寮ともいいます)や「福祉ホーム」,就労の機会を提供したり,そのための訓練を行う「授産施設」や「福祉工場」,さらに精神障害者の社会生活維持?継続のためにさまざまな支援を行う「地域生活支援センター」などの「精神障害者社会復帰施設」,また家族会やNPOなどが運営している「小規模作業所」も資格がいかせる職場です。

Q.仕事内容は「社会復帰」のための「相談援助業務」ということで「社会福祉的な立場から」とうたわれていますが,具体的にはどのような業務が中心ですか。

病院で働く場合と,行政機関や社会復帰施設で働く場合とでは,業務内容にすこし違いがあります。簡単に申し上げますと病院で働く場合は,

  1. 入院中の生活上の問題,医療費や生活費などの経済的な問題に関する相談援助
  2. 退院後の就労や住宅,生活全般に関する相談援助を行い,退院を促進させること
  3. 家族との相談や調整

などが主たる業務になります。また,病院のなかの「デイケア」部門では,通院してくる利用者に対して,相談援助,生活技能訓練(SST)の外に他職種の方と共にレクリエーションやスポーツなどの企画?運営を行っている場合も多いようです。
社会復帰施設では,さまざまな共同作業を通じた生活訓練や職業訓練を中心に,経済的な問題や就労に関することや家族に関することなどの相談援助を行っています。退院しても「家でごろごろしているしかない」「働きたいけど自信がない」などの悩みをかかえている精神障害者はたくさんいますので,同じ立場の人が集まる社会復帰施設は退院後の生活には大切な場となります。そのほかに,ここでは述べきれない多くの活動を行っています。
要するに,精神障害者は,医学的な管理が必要な「疾病」と,そのために長期にわたり日常生活または社会生活に相当な制限を受けています(障害)。そのほかに差別?偏見(内なる偏見?外なる偏見)にさらされることも多く,「生活のしづらさ」を背負っています。さきほどもお話ししましたとおり,病気を治すことはできませんが,患者の方々のさまざまな相談にのり,生活を支援することで,「生活のしづらさ」の部分をできるだけ減らし,精神障害者がふつうに地域で生活できるように支援していくことが最大の目標です。

Q.資格をめざされる方にアドバイスをお願いいたします。

資格は,第一義的にはどの資格も同じと思いますが,資格をもっている人のためのものではなく,利用者のためのものです。このことを忘れないで欲しいと思います。資格をもって就職すれば安穏と仕事ができるのでは,といった考えをもっている人には向きません。新しい分野ですから,精神障害者に対する差別や偏見を解消していくなどチャレンジする精神も必要になってきます。また,すぐに成果がでる仕事ではありませんから,辛抱強く取り組むことも求められます。 社会福祉の分野でよく言われることばですが「温かい心と冷静な頭脳」(warm heart & cool head)が大切です。1年生の間は社会福祉に関する科目を幅広く学び,2年生以降で精神保健福祉に関する科目をじっくり学んでください。そして,繰り返しになりますが,精神障害をもつ人が当たり前の生活ができるようになるためにはどうすればよいか,を常に念頭においてください。

貴重なアドバイスをありがとうございました。

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