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VOL.28 JUNE 2005

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【現場から現場へ】

[実習生を迎える] 現場で待っています

(社団)日本社会福祉士会岩手県支部事務局長
岩手県介護支援専門員協会会長 青山和敬荘施設長

佐々木 裕彦

◆1 その人の目標がその人を作る

 1999年11月,国の社会福祉士養成カリキュラムが改正され,実習にかかわる指定科目は「現場実習指導」と「現場実習」の2つになりました。「現場実習」の5つの目標と,「現場実習指導」の4つの目標を理解してください。つまり,その達成に向けて学生だけでなく,学校も施設も三者協働で取り組む現場実習であり,その目標と計画の合意形成過程という段階が実習成果に結びつく大切なものだからです。
─意味がわかれば苦痛の度合いが少なく,
   目的に価値があれば払われた努力は犠牲に感じない─

◆2 計画とは未来に関する現在の決定である

 目標は「専門職としての総合的な対応能力の修得」ですが,その修得にはあまりにも短すぎる実習期間です。実際には,より具体的で実現可能な目標に絞り込む作業が必要です。計画策定では,例えば利用者のケアプラン作成演習で学んだように,良質なアセスメントによって初めて明らかになることです。つまり,自らの学習の達成度や疑問と実習施設の現状等のアセスメントにより,ニーズを明らかにして優先順位をつけ,「より具体的で実現可能」な短期目標を設定します。次に,いつまで,どのような方法で,何をもって達成とするか等の具体的計画を立てます。さらに,長期目標として前述5つの目標までのスモールステップを作ります。
 大切なことは,指導者と何度も相談し,三者で合意形成を図ることです。その合意形成過程での信頼関係のあり方も含めて,実習成果に大きな影響を及ぼします。つまり,これまで学習した対人援助の知識や技術は,利用者支援のためと同時に,まずは指導者や職員関係で活用されます。
─不十分な準備の結末として,不本意な効果しかあがらないことを
   軽く見過ごしてはならない─

◆3 同じやり方をしても誠意の有無で成果が違う

 「理論を現実場面で理解し,統合して技術を活用する」ためには,(1)生活問題を抱える人々の問題や課題を理解する,(2)その背景から要因を分析して理解する,(3)社会資源の活用可能性とその障害を理解することが前提です。実習現場は利用者やご家族の「生活の場」であり,その同意あってこその実習であると同時に,同意しない人もいて当然です。また,独断やこだわり過ぎ,そして率直すぎる見解の表明等が利用者や職員との心理的な溝になり,しいては知識や技術の壁にぶつかり自らの適性に悩むかもしれません。
 しかし,現場の援助を実際に見てその難しさを考えてみることは,人間関係や援助過程の難しさと理論どおりにいかない実体験になるし,その体験こそが実習におけるもう一つの大切な目標と意義であることを忘れないでください。「けっして誤ることのない者は,何事もなさない者ばかり」「失敗は間違いではなく正当な行為である,ただ予期され意図された行為にとって代わったにすぎない」。勇気を出して,積極的に質問してみてください。
 普段見えないものが,少し学ぶと見えるような気がします,しかしもっと学ぶとやはり見えないことに気づきます。そして「生きがいについて科学は語れない」「大切なものは目に見えない」という限界等にも気づかされます。私たちが,知識や技術を手段として駆使しながら最終的に目指しているものは,「彼らについて何を知っているか,彼らに対して,また彼らのために何をやったか,ということではなく,彼らと共にどういう生き方をしたか」という,豊かな出会いの実践なのです。
─「相手との間に距離をとること」
これはあらゆる援助関係において心得ておくべき基本原則である─

◆4 時代には時代の限界がある,なすべきことをなせ
   (ぶるな,しかし,らしくあれ)

 忙しく飛び回っている現場です。専属で指導できないかもしれません,実習マニュアルもないかもしれません,指導者に社会福祉士の資格がないかもしれません,資格はあっても経験でしか仕事をしない人かもしれません,上司の思い込みのみで実習が組み立てられているかもしれません。
 しかし,指導者や職員の多くは,利用者やご家族,職員関係の中で多かれ少なかれさまざまな壁とぶつかり悩んだ実体験を持っています。実習生の疑問や質問には必ず答えるし,積極的な実習生にはより多くの回答とより高度な指導で対応する努力をするし,答えられなければ後で一緒に調べてくれると思います。指導者から多少そっけない対応をされても,けっして孤立しないでください。
 社会福祉士の認定制や更新制が検討されている現在,職能団体である日本社会福祉士会では,実習指導マニュアルの普及と実習指導者研修に本格的に取り組もうとしています。また,各都道府県支部でも受験対策講座や全国統一模擬試験等を通して,資格取得をめざす方々への支援を重点課題にしているところです。現場でお待ちしています,三者一緒に,実習がんばろう!
─変えられないものを受け入れる心の静けさと,変えられるものを変える勇気を,そしてその両者を見分ける英知を我に与えたまえ─

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