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VOL.32 DECEMBER 2005

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[関連施設紹介] 施設運営と介護費用《その3》

医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長
大森 俊也

 前回は,介護報酬の改定と介護費用のバランスコントロールについてふれてきました。今回は,栄養ケアマネジメントについて施設運営と介護費用から考えみたいと思います。

◆これまでの整理

 介護保険制度開始以前,高齢者の施設利用における費用は,老人保健法による療養費,老人福祉法による措置費という異なる制度と費用体系で運用されてきました。2000年4月の介護保険制度の開始にあたり,仮単価にかかるさまざまな議論を経て,介護保険制度における施設給付費の単位設定に至りました。しかし,共通の介護保険財源を支出根拠とする居宅系サービスと介護保険施設との運営に収益差が発生してきたことにより,2003年,全体のバランスをとるという理由から介護報酬が改定されました。2005年10月には,居宅生活者と施設利用者に対しての給付偏重に対しての是正が行われてききたところです。

◆基本食事サービス費

 介護保険の制度開始当初から基本食事サービス費は,「介護」の報酬単位の体系から分離して設定されてきました。つまり,食事を作ること自体は,介護的要素にありながら食材費を介護保険費用に含むこと自体が不適切であり,居宅生活者とのバランスを欠くことためと考えることができます。介護保険以前は,給付費の中に給食費が含まれ,全体をまとめた利用料として一部負担金を負担することになっていました。2005年10月の改定では,食材費と調理費に相当してきた食費の取り扱いに対して居宅生活者と施設生活者との給付上のバランスを是正する目的で基本食事サービス費が廃止されました。
 施設の食事に対する考え方の根本には,「施設=集団給食」というイメージを払拭できない献立状況にありますが,指示箋による特別食だけではなく栄養価や嚥下を重視した形体の配慮(軟菜食やソフト食,ムースやペースト,流動に至るまで),禁忌食や嗜好に応じた代替食などにも配慮して取り組みを進めてきた施設,苦労してきた施設は限りなく多いと思います。

◆介護報酬の改定

 今回の介護報酬改定で保険給付の対象になる栄養管理とは,従来の「栄養管理業務」ではなく,「管理栄養士による栄養ケア?マネジメントが適切に行われている」場合に限られることになりました。
 今回の報酬の改定においてごく粗い計算をしてみますと,基本食事サービス費と基準費用額の差額に管理栄養士加算と栄養マネジメント加算分を補填しても1日あたり500円の減額になります。100名定員の施設かつ全ての利用者が特定入所者介護サービス費の対象者で365日利用があったものとみると単純に給食にかかる費用だけで18,250,000(円)の減収となります。また,特定入所者介護サービス費の非該当者については,利用者と施設の自由契約となっています。ちなみに,当施設では,利用者の70%の方と1,680(円)で契約させていただいています。

(参考)
負担区分 利用者実費負担 介護保険給付
内容 (食材料費+調理費) 補足給付 (体制加算+栄養マネジメント加算)
改定前 2,120円 食材費
(780円?減額認定)
基本食事サービス費(1,340円)
今回改定 1,380円
※1
基準費用額
(1,380円)
特定入所者介護サービス費 栄養管理費用(12単位+12単位)
(240円)×地域区分単価
※2

※1 2,120?1,380=740(円)  ※2 約240(円)

◆栄養管理の見なおしと費用

 これまでの一般的な給食システムの「給食管理」は,「作り手の栄養管理」だったともいえます。言わば「献立ありき」の「栄養管理」でもよかったということになりましょうか。施設によって差異があると思いますが,栄養士は調理の一員という勤務ローテーションにしっかりと組み込まれたり,利用者個々の摂食状況や調理の工夫に際し意思疎通が少なかったり,個別嗜好や残菜による摂取量のリサーチやコミュニケーションなど,栄養管理に利用者の姿が見えず不十分のことが多かったことも見直しの要因といえましょう。
 そこで,今回の報酬改定の意義を考えてみると,とりわけ食費に関して(1)居宅生活者と施設利用者間の給付不均衡の是正(前述),利用者の健康や体力づくりに積極的に関わる,(2)受動的給食システムの改善,(3)食費の自己負担化と嗜好ニーズの充足 (4)集団栄養管理から個別栄養状態の把握,(5)個別栄養管理のシステムに対するチームアプローチなど,費用対効果からこのように意義づけできるのではないでしょうか。

◆栄養ケア?マネジメント

 栄養ケア?マネジメントとは,(1)適切なアセスメントの実施に基づいて利用者に適切な栄養ケア計画の策定,評価を行い,(2)栄養ケア計画に基づいて利用者の個別性に対応し,安全で衛生的な食事,経腸栄養法及び静脈栄養法による栄養補給,栄養食事相談,多職種協働による栄養問題への取り組み等の栄養ケアを提供し,(3)利用者の低栄養状態の予防?改善,自己表現を達成するための実務上の諸機能(方法,手順など)を効率的に発揮する体制とされています。
 せんだんの丘では,管理栄養士体制については,基本食事サービス費におけるこれまでの栄養管理や調理をより充実していくためのものとしてとらえ,また,栄養ケア?マネジメントについては,これまでに積み上げてきたさまざまな経験を再評価する素材であると考えています。

 次回は,栄養マネジメントの手順について進めてまいります。

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