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VOL.36 JUNE 2006

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[関連施設紹介] 口腔ケア室の取組み1─チームケア

医療法人社団 東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘
事務長 大森 俊也歯科衛生士 若生 利津子歯科衛生士 小野美由紀

 前号では,栄養ケア?マネジメントについて必要性をご紹介いたしました。

 食事は,味覚,臭覚,視覚や時に聴覚や触覚,場所や時間,趣向や感性を含めて「楽しく」したいものです。「せんだんの丘」では,2000年4月の開所時から歯科衛生士を常勤職員として配置していますが,その役割は,(1)口腔内環境のアセスメント,(2)歯科診療へのマネジメント,(3)口腔内の衛生保持,ブラッシング指導等,(4)口腔機能の向上への取り組み,さらに,(5)施設内での研修,歯科衛生士養成にかかる実習指導等人材育成にも大きくかかわりを持ってきています。
 今回は,口腔ケアの意義について,口腔ケアのスタッフ要である2人の歯科衛生士にチームケアの大切さを聴かせていただきました。

◆口腔ケアの認識

大森 健康増進(介護予防)には,栄養摂取はとても大切なことで,今回の介護保険制度改正に伴う予防給付では,口腔ケアの奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】性を口腔機能向上加算として実績報酬にされてきましたね。

若生 そうですね。これまで在宅の方々には,居宅療養管理指導がありましたが,通所リハビリテーションにおける口腔機能向上加算が設定されたことは,サービスの質を意図的に転換する必要があるということを意味していますし,丁寧にエビデンスを蓄積する必要がありますね。

大森 今回の通所リハビリテーションにおける口腔機能向上加算の創設は,居宅生活の方の口腔ケアの状況をどのようにうけとめていくことになりますか?

若生 口腔ケアの場合,自分なりに出来きているといっても自立のレベルが読み取りにくく,観察しにくいし,ケアプランにも載りにくい状況のようです。また,要支援1?2以前の非該当の方たちのための地域支援事業の中にもメニュー化されていることからも在宅での口腔ケアの奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】性を強く感じます。

◆施設ケアにおける口腔ケア?コミュニケーションの奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】性

大森 施設には,さまざまなケアを集積しているという好条件がありますが,直近の介護保険報酬改定で経口維持加算,経口移行加算が設定されたということは,口腔ケアの必要性が示唆されたように思いますが?

若生 現段階では,介護予防が中心ですので,きっかけ作りということでは進歩したということが言えますが,治療の必要な場合は,受診-治療へのマネジメント機能を発揮し,治療の必要のない方で希望者には,定期的なかかわりをもたせていただけるようになりました。しかし,かかわるスタッフについては,明確にされている状況ではなく,歯科医師,歯科衛生士会などでも登録制にしながら進めていこうということも話題になったことがありますが,実現できませんでした。

大森 施設給付に口腔機能向上加算があからさまに認められたならば,施設ケアの場面ですら「普通の暮らし」への支援ができていないということを露わにするということになりますが,自立に向け生活行為のひとつひとつを確認する介護老人保健施設の役割からすると,適切にアセスメントを実施する上で必然性があるように思えますが?

小野 せんだんの丘のように,口腔ケアのサービスを常勤の歯科衛生士から受けられるシステムがあることは意義深いと思います。私は,前の職場で施設や病院に出向いての口腔ケアの経験がありますが,利用者さんにとって継続した口腔衛生が成立せず,スタッフにもなかなか理解されなかったという経験があります。昨年,せんだんの丘に勤務させていただくようになってから,気づいたのですが,診療所勤務の歯科衛生士という関係性では,相応の施設理解や経験,とくにコミュニケーション力やそこでのチームケアの一員であるという積極的にかかわるべきだったと強く感じています。

大森 利用者の皆さんや職員のペースにあったコミュニケーションがとれるようになるのは,難しいことですね。例えば,せんだんの丘で実施している学習療法に取り組む場合のコミュニケーションの取り方と類似していますが,1対1の一定時間の集中したコミュニケーションは,施設内では,難しいという先入観が働きましたよね。でも大切なことであり,口腔ケアの時のコミュニケーション場面では,共通していますよね。細かなことをお聞きしますが,ユニットには,歯磨き用の鏡がありますが,「さあ,磨きましょう」というのではなく,二人がユニットでブラッシングの介助に携わっているとき,どのように話しかけながら歯磨きをしているのでしょうか?

若生 排泄ケアに介助を要する方は,口腔ケアにも介助を要する場合が多いのですが,ひとりひとりオムツやパットが異なるように対応も会話も相手のペースに合わせ,できることを一緒に喜び,支援するように言語的なコミュニケーションを図っています。当然できないことには,お手伝いしますが,できたときに鏡に移ったお顔に笑顔を返すよう,目線やタッチングも大切にしています。

大森 歯科衛生士が毎日,全員にかかわるということは,できませんよね。ユニット職員とのコミュニケーションは,どのようにとっているのですか?

若生 整容のレベルの歯磨きも小さなことの積み重ねです。その大切さは,「口臭がなくなった」「義歯が入ってよかったよ」「噛めるようになった」「食事がおいしくなった」など口の機能を整える実践をできたこと自体が,共通したモニタリングであり,コミュニケーションと思っています。

小野 同時に,その日にあった変化や気づいてことを記載している情報ノートの存在は,とても大きいと思います。カンファレンスへの参加はとても大切で,歯科衛生士であっても口腔の情報だけを収集?発信するのではなく,「生活支援者」の立場を意識しているところです。本人の生活や家族の背景もそうだし,既往歴などもすべて知っておきたいし,自分のかかわっていない時の情報はほしいですね。

若生 加えると,歯科衛生士が,業務占有する領域だけのかかわりであれば,きっとスタッフには,口腔ケアの大切さは伝わらないし,“歯科だけの領域の人だから口腔だけみていればいい”というように協働スタッフでありながらスタッフに入れてもらえなくなることも考えられます。開設当初は,皆それぞれがケアの充実に一直線でしたから,背中に刺さる視線を感じたこともありましたが,“支えてくれている”という実感は,今風に言えば“他職種協働とかスタッフ連携”ということになるのでしょうか。

◆口腔ケア職員の必要性

大森 口腔ケアに消極的な施設も多いように聴きますが,職員や利用者のみなさんへの意識的なかかわり方について教えていただけますか?

若生 健常な私たちは,いつもは抵抗力もあるし,唾液も出ているし,1日2日位歯磨きしない状態で不快感があってもあまり生活に変化はないかも知れません。仮に保清面で,拭き残しや下着を汚してしまう,など汚れて気持ちが悪いから,とか違和感があるから取り替えるという“不潔を清潔にする”という行動が生じます。“清潔は不必要”というような考えには,ならないと思います。清潔でありたいと考えるはずです。

小野 そうですよね,専門性も必要ですが,「今できることは,何か」が大切で,自分の親や自分自身でもあるという“アイデンティティ”の量がバロメーターになるのではないでしょうか。

大森 厚労省の示している,身体介護型の介護システムから認知症ケアをベースにした介護の方向性にも符合しますね。これまでできていたことができなくなる,ということでなく,億劫になる→面倒くさい→しなくなる,あるいは,忘れてしまうなども出てきますよね。支援へのケアは,ここを見逃さないのがポイントですよね。

若生 それには時間を作って取り組む必要があります。明確に表現してしまえば,“時間がない,仕事が増える”“やれない,やらなくてもいい”ということ自体がプロとしての危機感の欠如にほかならないと言えます。ですから時間がないからとか,手がないということは,理由にはならないのです。

大森 口腔ケアも対人援助の一領域ですから援助過程の中でみると治療モデルとなりますが,口腔ケアのアセスメントは,従来の診療室型にとどまらず,生活場面や生活背景への介入もあり,生命維持につながる看護や生活ケア,生活リハビリの要素も含まれますね。生活支援という視点からお話しをしていただけませんか。

若生 例えば,入所当初からリハビリ職員(作業療法士)から心身機能評価の情報をもらいますが,?座位を保つ?歯ブラシが口まで届く?もう少し奥まで入れる?コップを持つ?水を口に含む?口に水をためられる?前傾姿勢をとって吐き出せるというようにアセスメントのもとでの生活行動の支援は,まさに生活リハビリテーションでもあり,ただの歯磨きじゃなくなるのです。ですから歯科衛生士の活動は,「ふつうの暮らし」を取り戻す支援者として,ユニットの看護?リハ?介護の各ケア職員と共通の理解のもとに進めていく職員になろうと努めています。

大森 とても大切なことですね。とかくユニットケアは,“ふつうの暮らし”を復活するハード面が優先されがちですが,明らかに“生活支援スタッフの質の確保”も奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】な問題とされています。生活行為のアセスメントは,行われていても数多く“気づく”という感覚だけではなく,“実行するには,裏づけ(エビデンス)が必要”ということもあります。ケアの職員が自信をつけることと介護離職の関係にも通じますね。“住み心地とかかわり方”の質実両立の確保によって“普通の生活を取り戻す”感性の必要性につながるということになりますね。

(つづく)

 専門性の職性や職域の壁は,どこの施設にもあると思います。ポットのお茶を作るのは,厨房かユニットか。調理は,厨房かユニットか。等々保健衛生行政を遵守することも.生活者としての尊厳も必要です。また,費用の側面から業務の集積と分散,施設ケアコストから見極めていく必要性もあります。
 次回は,4月から採用になった言語聴覚士を交えて口腔器官機能,口腔衛生,管理栄養のスタッフの思いをご紹介します。

取材後記
 初めての試みでしたが,口腔ケアスタッフからの直接取材形式でご紹介することができました。

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