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VOL.36 JUNE 2006

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[OB INTERVIEW] グループホームでのしごと

社会福祉学科卒業生
S.U.さん

 「地域のなかで」がいまの福祉のひとつのキーワードですが,施設よりも家庭的な雰囲気のなかで暮らせると話題のグループホーム。精神障害の方向けのもの,知的障害の方向けのものもありますが,今回は認知症(痴呆)の方を対象とするグループホーム(正式には「認知症対応型共同生活介護」)で働いておられる通信教育部卒業生の方にお話しをお伺いしました。


Q.グループホームはどんな方が利用されておられますか。

A.70?90歳台の認知症の方9人がひとつのグループホームに住んでいます。3ユニットあり全部で27人の方が共同生活していることになります。利用者の高齢化が進み,今年も1名亡くなりました。「看取り」の機能がこれからのグループホームに求められているのかな,と感じています。

Q.利用者はグループホームにどこからいらっしゃったのですか。

A.3年半前の開設当初は老健(介護老人保健施設),特養(特別養護老人ホーム)から来る方もいらっしゃいましたが,最近は「デイサービス」や病院からの紹介というかたちが多いです。家族と住んでおられたのが,認知症が進んだり,主介護者が病気になったりという事情で,自宅で介護を受けることが難しくなった方が利用されます。

Q.歳をとってからグループホームという新しい環境でそれまでは知らない方といっしょに住むのは,認知症の方にも大変なように感じますが。

A.スタッフは,新しく利用された方には,とにかく安心を与えてなじんでいただくことを第一にしています。安心感をもっていただければ新しい環境でも落ち着いてきます。利用前の家族介護では,介護する家族はなかなか自分の親が認知症になったのが受け入れられないことが多いです。そのため,家族が疲れてカッとなってしまうなどの状態が多く,精神的にいい関係が築けないようです。そこで,私たちが受け入れてあげれば,新しい環境にもなじんでもらえることが多いです。

Q.スタッフは何人ですか。

A.スタッフは1ユニットあたり9人で全体に1名ケアマネージャーがいます。1棟あたり今年から始まった夜勤帯は1名での勤務(17時?翌朝9時 仮眠2時間),日勤帯3名(6時半,8時,10時に出勤)での勤務となっています。

Q.グループホームの1日の様子はいかがでしょうか。

A.朝ご飯は6時半の出勤者がつくります。利用者の朝のトイレや着替え,入れ歯の着脱などは夜勤者の担当,7時過ぎから朝食となります。家の中での役割として,可能な利用者には朝食の準備?配膳などは手伝っていただきます。食事は原則食堂でとります。具合の悪い方やどうしても好きなものを食べたい方は居室で食べていただいています。
 朝食後は可能な方にはそうじや洗濯物たたみを手伝っていただきます。洗濯物の仕分けはまちがいが多いため,スタッフが手伝います。もちろんこの時間居室で自由にされている方もいますが,「手伝っていただけますか」という「声かけ」は毎日するようにしています。「手が痛い」「頭が痛い」などという方は無理には誘いません。
 昼夕食の準備,食材カットも手伝ってもらいます。昼食は,私たちスタッフもいっしょに食べて緑茶を飲む習慣にしています。食後は片づけもいっしょに行います。公園でお弁当をすることもあります。散歩でさっと行けるところなどに何回も出かけ,今年は何回も花見しましたよ。また,畑もあり庭も広いため,皆さんに力を借りて行っています。秋には収穫したものを使い,芋煮会を家族の方も参加して行っています。

Q.利用者さんはどんな感じですか。

A.たとえば90歳の女性。意識レベルは高く,あいさつもでき,他の利用者に説教したりもします。口紅を塗っておしゃれするのがお好きな方ですが,とても元気。お化粧は何歳になっても,女性を元気づけるのだと思います。でも,トイレの場所がわからなくなったり,逆に部屋に戻って来れなくなったりします。そして,「ここに(私の)子ども(息子)がいる」などという妄想が見られます。

Q.妄想にはどのように対応するのですか。

A.妄想を否定することはしません。夜ベッドで「横に子どもがいる」といって端っこの方に寝て落ちそうで危ないので,「もう少しくっついて寝ようね」などと,その子がいるようにふるまいます。食事のときは,「おんぶしている子どもに食べさせている」というので,「おんぶしていると重いので,おろそうか」などと言ってその方に合わせてこちらも演技します。「そんな子どもはいないじゃないか」とは絶対に言えません。

Q.スタッフさんも大変ですね。

A.はい。そして,担当のスタッフによって利用者が不安を感じるのか,徘徊や妄想がひどくなったり,眠らなかったりする場合があります。その場合,何が利用者をそうさせてしまうのか,みんなでミーティングをします。
 利用者が怒っているとき,感情的になっているときは,こちらは落ち着いておっしゃっていることを聞きます。怒っているときに,ダメとは言いません。そして,すこし落ち着いたところで「おなかすいた」など別の話しをして気をそらせ,気分を変えるようにしています。

Q.ほかに配慮されていることはありますか。

A.自宅に帰りたいという帰宅願望が止まらなくなる方がいらっしゃいます。ドアに鍵をかけていても,「あけてちょうだい」と強い口調で言われる場合もあります。その方に対しては,「雨降りだから」「もうすぐ暗くなるから」「明日にしよう」「家族の方がお迎えに来たらにしよう」「お腹すいていませんか」などと言って気をそらせます。
 どうしても止められないときは,外出していただいてうしろをついて歩きます。どうしてついてくるのか,と怒られますが,バス停まで歩いたり,コンビニでひとやすみしたりで,気分が変わったり,疲れが出たところで,偶然出会ったようにして迎えの車に乗っていっしょに帰ってきます。だから常に下手な演技をしているようなものです。コンビニで食べ物を買ったりもしますが,この場合あとで家族の方にこういう理由でお金を使ったと承認をいただくことになります。

Q.1カ月の利用料はいくらになるのでしょうか。

A.要介護度によっても異なりますが,利用料は1ヵ月あたり85,000円?90,000円になります。介護保険の1割負担が約33,000円,部屋代が30,000円,食事代が1日750円×30日=22,500円となります。トイレのおむつなどは家族が用意します。

Q.グループホームに入るお金は,それ以外に何がありますか。

A.介護保険の残り9割分は入ってきますが,人件費や建物を建てるお金などを考えると赤字ではないのかどうか……。

Q.スタッフさんは夜勤もあって大変ですね。

A.今年からグループホームにも,夜勤スタッフの配置,ケアマネージャーの配置などが求められました。夜勤後は非常に疲れます。緊張感が強いせいでしょうか。仮眠2時間といっても利用者には夜眠らない人もいますので,私たちも眠れないときもあります。私たちスタッフにも,ストレスの解消が求められます。疲れていると,利用者に充分な対応をすることができなくなりますので。
 最後に,認知症の方々を介護する私たちは自分のストレスを解消するだけでなく,利用者の方々がストレスのない生活,楽しく生き生きと生活することができるように,相手の心を思いやり支援していかなければなりません。そのためには,知識を深めるとともに,自分の心を磨いていくことが大切だと考えております。


 スタッフの方の奮闘ぶりが目に見えるようです。お忙しいなか,具体的なお話しをお伺いさせていただき,ありがとうございました。

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