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VOL.54 SEPTEMBER 2008

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【現場から現場へ】

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【現場から現場へ】

[指導者MESSAGE] ソーシャルワークは人との繋がりから

社会福祉法人玉山秀峰会 特別養護老人ホーム秀峰苑 副施設長
本学社会福祉援助技術現場実習巡回指導教員
 西尾 卓樹

◆はじめに

 私は奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】を卒業後,現職場である特別養護老人ホームに勤務し22年目を迎えております。生活指導員として採用され,その後生活相談員に名称が変更し,介護支援専門員,業務部長等の職に就き,現在は社会福祉法人の理事,副施設長という立場ではありますが,できるだけ現場に入り日々奮闘している毎日です。
 22年間を振り返り,また通信教育部の実習巡回指導の経験を通して,感じていることや伝えたいことを(参考にならないかもしれませんが)書かせていただきます。

◆採用当時

 私が就職して初めに上司に言われたのは,「おまえの字は汚くて読めない。ひらがなの練習をしろ!」ということでした。それからの毎日,ひらがなの“あいうえお???”をノートに書き,小学生が先生に提出するように上司に見せては承認をもらう日々が続きました。依然として字はきれいではありませんが,丁寧に書こうという気持ちだけはずっと持ち続けています。
 また,生活指導員とは利用者の方々の相談業務を行うもの,と思っていたのですが,実際には蛍光灯の交換,草刈り,通院の送迎,各種機器の維持管理といった営繕にかかる仕事が主であり,こんな仕事をするために大学を出たわけじゃない,という気持ちがありました(大学を出たと言えるほどの勉強はしていなかったのですが)。

◆先輩,仲間との出会い

 「こんな仕事は辞めたい。じゃあ何をするか?」という自問自答を繰り返していた頃,幸いにも私の周りには本学出身の先輩がたくさんおられ,さまざまな愚痴を聞いてもらえる環境にありました。そんな時,ある先輩から「蛍光灯の交換がおまえの仕事でなかったら誰の仕事なのよ? 通院の送迎も誰かがやらなければ利用者の生活は成り立たないよな。『指導員』にこだわるのではなく,利用者の生活を全般的に支えていくことが俺達の仕事じゃないか」と言われました。単純な私は,この言葉に納得し,今日まで頑張っているのかなとも思います。
 この仕事を通して,利用者とその家族,地域の方々,職員,そして先輩や後輩といった何百人もの方との出会いがありました。その繋がりが自分の大きな財産であり,今の自分自身を支える源となっているように思います。
 学生の皆さんにも,実習を通じてさまざまな出会いがあるはずです。資格を取得するためのノルマの実習で終わらせるのではなく,将来に繋げることのできる関わりを持つよう心がけてみてください。巡回指導者は,実習以外のことでも喜んでアドバイスをしてくれると思います。遠慮のいらない貴重な社会資源として活用しましょう。

◆「制度」と接するのではなく「人」と接すること

 介護保険法や自立支援法の施行等,福祉を取り巻く情勢は大きく変わってきています。利用者本位,自己決定,自立支援,生活支援という理念のもと集団画一的なケアから個別ケアへ,社会福祉士等の専門職としての社会的認知の深まりと期待,成年後見制度等の権利擁護事業の展開等,時代に即した福祉事業が進められています。しかし一方では市場原理のなかでの不正な経営や請求等で利用者を食い物にする事業者の存在,福祉職の離職率の増加による人材難,制度の狭間でサービス利用に結びつかない方々など,多くの課題があることも事実です。
 多様な価値観,ニーズの中,完璧な制度は存在しないと思います。さまざまな社会資源や各種制度を活用していくことは大事ですが,いかなる時代,場面,状況においても「制度」と接するのではなく,「人」と接していくこと,それが福祉の原点,ソーシャルワークの基本ではないでしょうか。

◆現在???生涯ソーシャルワーカー

 「どんな職名であっても俺は生涯ソーシャルワーカーでありたい」。
 これは,ある先輩の一言です。現在,立場上,人事労務管理,法人事務局,予算の管理などが主な業務となっていますが,福祉に携る上で,上記のように自負できるソーシャルワーカーを自分も目指したいと思いますし,学生の皆さんにも,「人」と接するソーシャルワーカーとなることを期待します。共に頑張っていきましょう。

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