【学習サポート】
[公的扶助論?社会保障論]
冬期スクーリングの補足です ─疑問?質問にお答えします─
教授
阿部 裕二
2005年12月10?11日に横浜市の鶴見大学を会場として,公的扶助論のスクーリングを行いました。その際,2005年10月1日施行で介護保険制度の一部が改正されましたが,それに伴い生活保護における介護扶助の取扱いがどのように変わったのかというご質問に対して,不確かな返答しかできませんでしたのでこの紙上をお借りして補足させていただきます。
また,大阪におけるビデオスクーリング(社会保障論)でのアンケートのなかに,労災と精神障害の関係についての質問もありましたので,このことも併せて返答させていただきます。これらの内容は,今回スクーリングを受講された方のみならず,公的扶助論,社会保障論を受講されているすべての方々にとっても奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】な内容であると思います。
◆介護保険制度の改正(10月施行分)に伴う生活保護制度の対応について
2005年10月1日に施行された介護保険制度の一部改正のポイントは,在宅と施設の利用者負担の公平性,介護保険と年金給付の調整の観点から,低所得者に配慮しつつ,介護保険施設などにおける居住費,食費について保険給付の対象外とされたことです。それに伴い,生活保護制度における取扱いについては,「生活保護制度における介護保険施設の個室等の利用等に係る取扱いについて(平成17年9月30日社援保発第0930002号厚生労働省社会?援護局通知)」により次のように定められています。
(1) 介護保険の被保険者である被保護者の取扱い
[1] 介護保険3施設入所者について
食費については,従来どおり1日につき300円が国民健康保険団体連合会を通じて介護扶助費として支給されます。
居住費については,多床室の場合には新たな負担は発生しませんが,ユニット型個室等については,原則としてその利用自体が認められないこととされています。これは,介護保険施設における個室の割合が少ないことから一般低所得者との均衡を考慮し,また,最低生活の保障という生活保護制度の主旨を勘案したものといわれています。ただし,例外的に居住費の自己負担額について,生活保護費で対応しなくても入所が可能な場合については,ユニット型個室等の利用が認められる場合があります。
[2] 短期入所生活介護および短期入所療養介護について
食費については,居宅において保護を受けている者に対する生活扶助費に食費が含まれていることから,利用者の自己負担になります。滞在費については,施設入所者と同様に,多床室では新たな負担は生じません。
ユニット型個室等を利用した場合の滞在費は自己負担が発生しますが,施設入所の場合と異なり,被保護者が滞在費の自己負担額を支払って利用することは認められています。
[3] 通所サービスについて
食費は,短期入所生活介護および短期入所療養介護と同様に生活扶助費に含まれることから,利用者の自己負担になります。
(2) 介護保険の被保険者ではない被保護者の取扱い
なお,介護保険の被保険者ではない被保護者の取扱いについては,介護保険3施設への入所,短期入所および通所サービスの利用について,介護保険の被保険者と同様の取扱いとされています。
費用に関しては,介護保険被保険者が介護保険により給付される部分についても介護扶助によって支払われます。
例外については若干省略していますが,以上が2005年10月1日に施行された介護保険制度の一部改正のポイントです。これらの内容は,『生活と福祉』2005年11月号(No.596,全国社会福祉協議会)から引用?参照しています。詳しくはこの雑誌をみてください。
◆労働者災害補償保険と精神障害の関係
業務による過重な心理的負荷が原因となって,精神的な疾病に陥ったり,自殺するに至るというケースが近年多くなっており,労災請求(2003年度における精神障害等の労災補償に関する請求件数は438件,認定件数は108件といずれも増加している)が行われています。とはいえ,精神障害は発病の有無や時期等を明確にすることが難しく,その原因も業務による心理的負荷に限らず私的な心理的負荷の加わることもあるために,業務上?外の判断が困難ケースが多くあります。そこで厚生労働省によって,精神障害等の労災請求事案の業務上?外を判断するため,「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」が示されました。この指針の内容に関しては,ネット上でもみることができます(http://www.jil.go.jp/kisya/kijun/990915_01_k/990915_01_k.html)。
手続きに関しては,医師の診断がなければ労災の手続きに入れませんので,まずは精神科医らに症状を相談する必要があります。ただし業務上か否かの最終的な判断は労働基準監督署が行います。上述した「判断指針」においては,[1]判断指針で対象とされる精神障害を発病していること,[2]判断指針の対象とされる精神障害の発病前おおむね6カ月の間に,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること,[3]業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害等を発病したとは認められないことを,業務上の疾病としての精神障害としており,発病要因が業務外の出来事などにないかを見極めるため,手続きには平均10カ月(2003年度統計)かかるといわれています。
もし,精神障害を発症し療養中の労働者(パート,アルバイト含む)が労災認定されると,治療費を国が負担する「療養(補償)給付」,療養中の収入の約六割を補償する「休業(補償)給付」,あるいは収入の約二割を補償する「休業特別支給金」などが受けられますし,後遺障害についても一時金や年金が支給されることになっています。
労働者災害補償保険と精神障害の現状に関しては,厚生労働省編『厚生労働白書(平成17年版)』ぎょうせい,などを参照してください。
以上,介護保険と労災保険に関するご質問に,大まかですが返答させていただきました。受講生おひとりおひとりの目標が達成されることを祈念しております。
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