【現場から現場へ】
[関連施設紹介] 施設運営と介護費用《その4》
医療法人社団 東北福祉会 せんだんの丘 事務長
大森 俊也
前回は,平成17年10月の介護報酬改定が実施されるに至った背景の一つである,介護報酬(施設給付費)に包括されてきた食費の取扱いについてその概略にふれてきました。今回は,介護報酬として新たに位置づけられてきた管理栄養士(栄養士)体制加算と栄養マネジメント加算について考えていきます。
◆介護報酬の特徴
病?医院等の診療報酬と介護保険事業等による介護報酬は,社会保険方式による報酬制度としての共通点とそれぞれに固有の特徴があります。
診療報酬では,利用者である患者の診療内容の一つ一つが「医療行為」として個別化されていますが,介護報酬では,利用者の要支援?要介護の認定にもとづきサービス提供事業,提供内容により異なります。介護報酬では,「介護行為」や介護に要する「時間」によって包括的に報酬が設定され,サービス利用者の要支援?要介護の状態像によって報酬額に差を発生させているという特徴があります。介護報酬には,包括された(介護費用だけでなく事務所等の維持管理等にかかる費用等)報酬と目的/効果を高めるための加算(報酬)があります。
また,介護保険制度では,利用者保護のために人員配置や設備の基準を満たさないとき,適切な介護提供がなされない場合等があったときにペナルティとしての「減算」や事業の取消などを想定し,利用者への不利益の回避を事業所に求めています。
◆加算とマネジメント
介護報酬における加算は,努力に対しての当然の報酬であり,[1]具体的なサービス提供に基づく「/月」「/日」「/時間」「/回数」による実績加算,[2]介護サービスの提供に必要とされる人員配置基準に加えてサービスの充足度を効果的に向上するために必要とする資格職人員の体制加算があります。介護支援専門員によるケアプラン作成のサービス組み合わせによる加算もそのひとつです。
介護保険が設定する「加算」は,2000年4月の介護保険制度創設時や2003年の介護報酬改定,2005年10月においても介護報酬の減額に対しての反対給付としてバランスコントロール(No.30)される仕組みの中に取り込まれていますが,介護報酬における「加算」の効果は,[1]利用者ニーズに応じ自己選択や自己決定をしやすくする選択効果,[2]介護保険事業に対する画一的なサービス提供の抑止効果,[3]事業者の積極性を誘導するサービスの質の向上ないしサービスの推進効果などがあると期待されています。また,「加算」は,包括給付に対する付加価値として実施目的と評価が明らかであり,費用対効果に資するマネジメント(チームケア)が必須になります。
栄養管理体制(管理栄養士?栄養士)加算および栄養マネジメント加算,経口移行加算,療養食加算は,このようにさまざまな背景のもとに平成17年10月の介護報酬改定にともなって再構築され実施されました。
◆栄養管理体制(管理栄養士?栄養士)加算
栄養管理体制加算では,入所人員にかかわりなく,これまで通りの常勤の管理栄養士もしくは栄養士が1名以上配置されていればよいことになっています。管理栄養士(栄養士)は,“必須の存在”として基本食事サービス費からの減算になっていました。今回の改定では,基本食事サービス費の廃止に伴い,介護保険施設に配置される管理栄養士及び栄養士は体制加算とされました。栄養マネジメントを希望する利用者のためには必須条件であり,専任者として医師と共同して利用者個々の年齢,心身の状況,栄養状態,健康状態に着目した栄養マネジメントを業務独占することになりました。
体制加算と職務内容には,これから解決していく課題も多く,栄養マネジメントを不要と考える方もいるはずですから,利用者のQOLにいかに効果的にかかわっていくかを試される情況にあるということができます。また,介護報酬の側面からは,驚かれるかもしれませんが,施設には,さまざまな定員規模がありますので,[1]と[3]とでは,同じ栄養士配置数で3倍の4,380,000円の収入差が生じることになっています。
[1]定員50名の施設の場合
1単位当たり10円
×12単位×50人×365日
=2,190,000円
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[2]定員100名の施設の場合
1単位当たり10円
×12単位×100人×365日
=4,380,000円
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[3]定員150名の施設の場合
[2]×1.5
=6,570,000円
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※地域区分1単位を10円としたときの計算
◆栄養マネジメント加算
この加算を算定する施設は,個別の高齢者の健康状態に着目した栄養管理を行ないますから,これまでの集団栄養管理を行うための帳票資料等は,不要とされました(栄養マネジメント加算をしない施設は,従来通りとされています)。
入所者の栄養状態を個々に「アセスメントし,その状態に応じて多職種協働により栄養ケア?マネジメントが行われた場合に評価」されますが,[1]常勤の管理栄養士を1名以上配置し,[2]医師,管理栄養士等が共同して,入所者ごとに栄養状態を把握し,個々人の摂食?嚥下機能に着目した食形態にも配慮して栄養ケア計画を作成する。[3]栄養ケア計画に従い栄養管理を行ない,入所者の栄養状態を定期的に記録し,[4]栄養ケア計画の進捗状況を定期的に評価し,必要に応じて見直すことなどマネジメント手法を用いて同意を得ることを求めています。
なお,栄養マネジメント加算は,施設を利用する上での体制加算ではありませんから個別同意の必然性があります。介護報酬額は,仮に全員から同意を得られたものとしてみると,12単位/日ですので上述の[1]?[3]の事例と同額となります。
施設における介護報酬の1人あたりの月額は,24単位×30日とすると7,200円になります。
次回は,経口移行加算,医師の指示せんに基づく療養食加算を加えた施設報酬と居宅療養指導費へと深めます。前号でお約束した栄養ケアマネジメントの手順は,費用理解をしていただいた後に譲らせていただきます。
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