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VOL.34 MARCH 2006

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[卒業メッセージ] 卒業おめでとう

福祉心理学科長
木村 進

 早いもので本学に通信教育部が誕生して4年が過ぎようとしています。そして,初めての卒業生を出せることになったのは,私たち教員にとっても嬉しい限りです。何しろすべてが初めての経験だったので,戸惑いの連続の4年間でした。十分な指導ができなかった面も多々あると思われますが,学生の皆さんの努力で卒業までこぎつけられたことに心から感謝をするとともに,「おめでとう」と声高らかに申し上げたい心境です。
 卒業される皆さんのはなむけに,いくつかメッセージを差し上げたいと思います。

1 重さは?

 必要な単位を揃えれば卒業ということになり,卒業証書をもらえることになるわけですが,同じ卒業証書でも,人によってその重みは違うのではないかと思われます。あなたの重さはどうでしょう? レポートを書いたり,スクーリングに出席したりしてコツコツと単位を揃えていった結果ですから,きっとずしりと重いのではないでしょうか。レポートを読んでいての勝手な推測ですが,時としてそのレポートを書くのに悪戦苦闘している様子が伝わってくることがあります。そういうレポートの積み重ねの結果としての卒業証書はきっと重いに違いありません。
 卒業証書の重さは,あなたの努力の重さです。その重さが,大学を卒業したという実感の土台になり,大学を卒業したことが,今後の人生に大きな意味を持つ原動力になるのだと思います。卒業証書を手にしたとき,ぜひその重さを実感し,それを忘れないでください。

2 賢さは?

 入学時のコメントで,大学で学ぶのは,知識や技術以上にhow to learnということだと書いた覚えがあります。つまり「学び方を学ぶ」ということです。大学入学の動機はそれぞれの異なるかもしれませんが,卒業まで到ったときに,このことについて振り返ってみてほしいと思っています。
 4年間の学習の中で,あなたの中に残ったこと,新しくつくられたことは何ですか? あなたは確実に賢くなったはずですが,さて,賢さとは何でしょうか?
 多くの時間はレポートの作成に費やされたはずですが,レポートを作成するということは,課題(テーマ)を理解し,書くべき内容を集め,それを整理して組み立て,文章として仕上げる という過程を含んでいます。そして,この過程全体に必要とされるのは,「考える」という行動です。したがって,考え深くなったと言えるでしょう。考え深いということは,別の表現をすれば,論理的に物事を考えられるということを意味しています。つまり,賢くなったということは,論理的に考えられるようになったということです。どんな仕事であれ,このことは,きっと大きく役に立つことと期待されます。

3 心理学は?

 卒業後は,「大学で何をやったの?」と尋かれたら「心理学をやりました。」と答えることになります。だから,「心理学」が卒業後のキーワードになります。
 私は心理学者ですから,「顔を見ただけで人の心がわかるでしょう」とよく言われます。そういう時,もちろん「そんなことはありません」と答えますが,世の中の一般の人はそう考えているのだということを実感します。学業をおえて卒業の時を迎えているあなたがたが,同じように「そんなことはありません」と答えられるとしたら,それは,あなたがたの学習が確実なものだったということを意味していると言って良いでしょう。
 「心理学をやった」ということの意味は,第一に,人の心を考える癖がついた ということだと思います。何かにつけて,この人は,どんな風に考えているのだろう とか 感じているのだろう とか考えるということです。第二には,その時の答が複数考えられるということです。私はこれを「可能な答」と読んでいますが,別の言い方をすれば,断定して考えないということです。第三には,その可能な答の中からもっとも適切と思われるものを選択することになるわけですが,その時に,可能な限り裏づけとなるものを土台にして考えるということです。その裏づけは,理論であったり,知識であったり,経験であったり,観察や調査や検査のデータであったりします。第四には,その結果でた答を人を操ることにではなく,人を動かすことに使うということです。

卒業おめでとう!

 方向は違っていても,同じく大学で心理学を学んだ仲間が増えることは喜ばしいことです。あなたがたが属している学科は,「福祉心理学科」です。福祉は幸福と同義です。したがって,福祉心理学科は,人の幸せに貢献できる人材養成,人の心の幸せを実現するために心理学を活用できる人材を育てることを目標にしてきています。その学科で学んだ人が世に出て,それぞれの分野で活躍してくれるということはは,その分だけ福祉の向上に貢献できるという大きな期待感をもって,あなたがたを送り出します。

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