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VOL.43 MAY 2007

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平成18年度通信制大学院修了者からのメッセージ

私の財産

社会福祉学専攻 S.K.

 通信教育で大学院入学を決めた時,私は「課題レポートを納得のいくものにする」と決めていた。これが,たいへんな結果を招いた。休学1年を挟んで5年間かけてしまったのである。修士論文担当の先生からは「そろそろ卒業しなさいよ。」と励まされた。先生にはまったく心配をおかけしてしまった。様々な事情があって,はじめの1年間はほとんど手につかなかった。結局2年目は休学せざるを得なかった。次に職場が変わるという転機を迎え,3年間が過ぎてしまった。もちろん,この間もコツコツとは取り組んではいた。休日は他の活動が入らない限り,ほとんどつぎ込んだ。しかし,あくまでも1本1本の課題レポート作成や試験レポートに全力投球をしたから,2カ月で1本のレポート完成ということもあった。卒業に辿り着けるかどうか不安を覚えるときもあった。この時,支えになったのがスクーリングであった。3年目で履修計画を変更したときにスクーリングを増やしたことは大成功であった。先生や学生との交流?議論は私を非常に意欲的に変えた。通信教育だから通学を最少にするとの考え方は間違いであった。4年目で予定した科目の単位修得をほとんど終え,5年目は修士論文に集中した。5年目の休日は夢中になって机に向かい,1日に10時間部屋にこもるときもあった。50歳を過ぎた私にとって,体力的には決して楽ではなかった。さて,本課程の学びの中での感想は,「本当の勉強をさせてもらった。楽しかった。」ということである。(1)課題レポートを書くために読んだ関連論文の難解さと苦闘しながら,福祉の学問としての奥の深さを知った。(2)大学院に入学しなければ出会わなかった文献にもたくさん出会うことができ,知識が広がっていく体験をした。(3)文献を読む中で,論者の意見と戦いながら,自分の考えが形成されていくことも味わった。(4)データを集めるためにフィールドワークもした。地元の歴史研究家の家に行って2時間ずつ2回話を聞いた。長年民生児童委員をしておられる方からも2時間の聞き取りを行った。市社協の資料コーナーに何回も行ってデータを書き写した。老人ホームに行って一人のケース記録をすべて見せてもらい書き取った。(5)国会図書館,県立図書館,福祉大図書館は,文献収集のため大いに活用させてもらった。
 修士論文については,社会福祉援助技術現場実習が本当に社会福祉援助技術を実習生に理解させるものになっているのかという疑問から,現場実習の実態を明らかにするための基礎的研究をすることとした。この辺の見定めが奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】であった。当初私は調査を含む研究を考えていた。しかし,担当の先生から必要とされる莫大な時間を考えると無理ではないかとの指摘を受け,文献を中心とした研究に切り替えた。これが研究の実現につながった。3月に研究計画を終え,4月から文献の収集を開始し,6月時点で抽出した論文の数326本,取り上げた論文155本,詳細分析した論文101本を基点とした。整理箱を購入し,ファイリングし,10月までかけて文献の要約と整理を行った。まさに体力勝負であった。基礎資料だけでA4版用紙104枚13万字を越えた。この間,担当の先生との面接指導を3回受けたが,これが有効であった。私が「まだ結論がみえません。」と申し上げると担当の先生は「研究だからまだみえなくていいのです。」と助言してくれた。これは力になった。どういう結論になるか楽しみにしながら研究に向かうことができた。今まで書いたことがないほどの文章量である。もっとも注意したのは論点のズレであった。研究動機と研究目的を繰り返し確認し,修正していった。平成18年の年末から正月の10日間は総仕上げの期間となった。健康管理のため毎日散歩をし,それ以外はほとんどの時間を論文作成に当てた。予定していた期間におおよその内容ができて,提出の1月20日までは10日を残していた。それからは,読み直しながら,修正を加えていった。
 最後に,通信教育で学ぶ方々へ,スクーリングは自分の意欲を維持することに有効であるので,可能な限り多くの科目に参加することを勧めたい。また,課題レポートは当初はなかなか書けないが,何本か書いているとコツがつかめてくるので心配は要らない。とにかく書き始めることである。持論の展開ではなく,文献や資料を活用した考察が大切だと思う。その内,文献を調べて考えをまとめていくことが楽しくなってくるはずだ。
 通信制大学院を修了させていただいて,私が何を得たかといえば,研究することの楽しさである。たくさんの文献と初歩的だが研究方法と緻密に論理的に考えを積み上げていく思考方法を経験できたことは,私の財産である。実践の現場にある方々が研究手法を修得し,研究を積み上げていかれることを期待したい。頑張ってください。

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