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VOL.45 AUGUST 2007

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[心理療法] 心理療法のレポートを添削して

准教授 秋田 恭子

◆はじめに

 今年度から心理療法を担当する秋田恭子です。よろしくお願いします。レポートを拝見させていただき,気がついたことについて,述べたいと思います。

◆「心理療法」のレポートで「再提出にならない」ために

1.レポート課題のテーマをよく理解しましょう!

 そのためには,「レポート課題集」にのっている,各単位の解説をよく読んでから始めてください。
 この解説の中で4単位めの「発達的カウンセリング」についての説明が少ないのでそのことについてお伝えします。
 この事例は,中学2年の男子です。中学2年という年代は一般的には,どんな年代でしょうか? この時期は,子どもから大人になる時期で,たとえば,身体的変化に対する心の状態,親との問題,人との関係,自分のとらえ方など,さまざまな変化があります。このことは,すでに多くの研究者が指摘していますので,それを参考にして,まずはその年代の発達的特徴をとらえてください。
 その上で,その特徴と比較してこの事例の中学生はどうかを考えてください。事例の文中には「ひとりで留守番できない」「一人では自分の部屋に行かれない」など,他にもこの中学生の状態について書かれた部分はありますが,その状態と一般的な中学生の状態と比較して,この事例の中学生はどんな成長を遂げており,あるいは遂げていないでしょうか? その視点を織り交ぜてこの事例を考察してください。これが,発達的視点ということです。

2.参考文献は教科書だけでは不十分です。

 教科書は,確かによくまとまっており,自分の知りたいことが,すべて書かれているように思われ,教科書の記述をまとめるだけで見栄えのよいレポートが仕上がると思われるかもしれません。しかし,レポートで要求されていることを書くには,教科書に書かれてある内容だけでは,とても難しい場合が多いと思います。教科書はまとまって書いてある分,解説も少ないので,わかりにくいところも多いと思いますので,時間がないとは思いますが,ぜひ他の本にも目を通してください。

3.参考文献としてのインターネットの利用について

 インターネットは,調べたいことを24時間,しかも自宅で調べられる便利なものです。しかし,他の先生もすでに書かれていますように,文部科学省とか,厚生労働省や大学の研究者のサイトや研究者の論文などはともかく,匿名やあだ名などのサイトもたくさんあります。そういう個人的な意見をそのまま鵜呑みにして,それをレポートに書き写す方もいらっしゃいます。インターネット上の意見は正しい知識に基づいたものである場合もありますが,時には全くでたらめなことがあります。
 忙しい中,なかなか図書館に通うことは難しいでしょうが,ぜひ,きちんと書かれた本を同時に参考にし,ネットからの引用には十分に気をつけてください。

4.引用した箇所はきちんと明記

 『学習の手引き』にもありますが,引用箇所は明記してください。そうしないとご自分の意見なのか,他の人の意見なのかわからない上に,他の人の意見を自分の意見として書かれるとそれは盗作になります。なお,引用箇所を明記することによって,時にはいかに引用が多く,自分の意見が少ないかにも気がつくきっかけにもなります。

5.誤字?脱字の確認?自分の文章を読み直しましょう!

 このごろは大きな辞書を調べなくても携帯電話などでも簡単に漢字は調べられます。レポートを提出する前に,漢字を今一度調べてください。また,レポートの中には,文章が途中で急に終わってしまったり,文字が抜けていたり,主語と述語があわないものがみられます。せっかくの力作も何を伝えたいのかわからないこともありますので,ご自分が書かれたレポートを,完成されたら,声を出して読まれることをおすすめします。

6.自分の意見を中心にまとめる

 レポートの課題に求められる知識をいったんは自分の中でかみくだいて,そこから考えられたことを中心にまとめてください。いろいろと勉強されて書きたくなってしまう気持ちはわかりますが,そうなってしまうと,レポートには,字数制限がありますので,蓄えた知識から考え,導き出されたものを書くスペースがなくなってしまいます。

7.余談ですが──レポート課題は単位修得のためだけにあらず!

 もし,単位の修得だけのために,レポート課題をこなすのだとしたら,それは時には苦痛を伴うものだと思います。ですから,皆さん,このせっかくの機会を利用して心理療法の知識や考え方をできるだけたくさん習得しようという気持ちで臨んでみてください。

◆おわりに

 夏期のスクーリングでも短い時間ではありますが,ロールプレイを通して,心理療法をみなさまに少し体験していただく予定でおります。心理療法は,とても難しいものだと思います。理論がわかったからといって,できるものではありません。しかし,理論はフロイトを始め多くのセラピスト(面接者)が,人間の心をよりよく理解したい一心で日々の臨床を通して,築き上げてきたものです。その理論をできるだけ理解することから心理療法は始まります。
 とは言え,心理療法は,本で勉強するだけでは,身に付くものではありません。自分自身が道具となって来談される方とかかわるわけですから,自分の心の状態にも健康にも気を配らなければならないものです。また,人間の心を扱うこの学問は,文化や時代の影響もうけるものですし,奥が深く,きりがなくて,とても魅力的な学問です。教える私自身も一生勉強です。どうぞ,ご一緒にこの「一生勉強の旅」にご参加ください。

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