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VOL.35 MAY 2006

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■「格差社会」再考 橘木俊詔

 つい最近まで日本人は「一億総中流」なんていわれていたのに,ここ数年「勝ち組?負け組」というイヤな言葉がはやり,実際に日本人の間で「貧富の格差」(所得や貯蓄の格差)がひろがっているようです。「貧富の格差」なんて戦前や高度成長期以前の1950年代に戻ったような感じですが,実際に「生活保護を受けている世帯が100万世帯を突破」「学校給食費や公立高校の授業料の滞納が増えている」などということをよく耳にします。このような「格差社会」をどういう目で見るのかは「社会福祉」を学ぶ際にとても大切なような気がします。朝日新聞の本年5月2日(宮城県統合版22面?関東版だと夕刊か)の「思潮21」のコーナーに載っていた「『格差社会』再考」という論評はわずか3,000字程度ながら大変わかりやすく,さまざまなことを考えさせられました。著者の橘木俊詔氏の論点を私なりに紹介してみます。

  1.  「有能な人,頑張る人が報われるような社会が良い」ことは確かだが,アメリカのような「競争をこよなく愛し,努力する人に報いる精神が強いので,勝者の高い所得を容認する」ような社会に日本をしてしまってよいのか。「有能な人,頑張る人にどの程度報いたらよいのか」をもう少し考えてみてはよいのではないか。
  2.  さらに,競争の結果生まれる「敗者=貧困者」,または競争に最初から参加できないでいる人への対応策をどこまで行えばよいのだろうか。「敗者が立ち直れるようにセーフティーネットを確保する」政策や「敗者を固定化せずに次の時期に勝者になれる機会を与える」政策は有効におこなわれているのだろうか。

 2.に関しては,「年金?医療?介護,失業といった社会保障では,給付削減と負担増加の策がとられており,セーフティーネットの主張と逆の道」ではないかと問われています。医療費や介護保険受給額を抑制するという観点から「給付削減と負担増加」がいまの社会福祉の合言葉のような感じです。しかし,実際にそれで困っている人がいないのかどうかなど,社会全体のなかでの福祉のあり方,社会保障費の有効な配分の仕方を考えてみたいと思わせてくれました。ご関心のある方は是非ご一読ください。

(Pon)

■「格差社会」再考 朝日新聞2006年5月2日統合版22面

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