VOL.14 NOVEMBER 2003 【学習サポート】
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【通信制大学院コーナー】[精神保健研究] テキスト選びの裏話教授 ●通信制と活字「多くの人が本を読まなくなった」といわれて随分経つ。本を読む人の数も少なくなったろうし,また,一人の人が以前より本を読まなくなったことも本当であろう。TVをはじめとするメデイアの発達は映像伝達の著しい普及をもたらしたわけで,ニュース一つ取っても新聞などの活字に頼らなくてよいわけである。まさに,「百聞は一見にしかず」が多くの場合に可能になったのだ。教育においても,視聴覚教育が効果的といわれて取り入れられてからかなりの時間が経っている。NHK教育テレビや放送大学など,テレビ映像による教育も随分普及している。一方,通信教育は,教育方法からみるとほとんど活字に頼っている。テキストを読み,理解し,自ら考え,レポートを作成して提出する。添削も活字によってであり,教育の媒体はすべて活字である。通信制を利用したり選択する理由は,活字とは関係のないさまざまな事情や要求によると思うが,結果として活字に多く接することになる。活字のみを媒体として学習するというと今日では暗いイメージを持つ人もいるだろうが,活字の使用,特に本を読むことが想像力や思考力の養成に適していることはよく知られている。 ●精神保健は文学であるすこし話は変わるが,奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】が中心になって立ち上げた「感性福祉学会」がある。昨年は第2回大会が開催され,そのときの基調講演では,日本社会事業大学の教授で日本社会福祉学会の会長でもある大橋謙策先生が,「地域福祉と感性」と題して講演した。そのなかで大橋先生は,学生に常々「社会福祉は文学である」と教えているという。そして,「社会福祉をわかろうとするならば文学を読んで欲しい。文学の中で何を感ずるか,それが大事なことではないか。生活のにおい,心理状況,そういうものをどう受けとめ,どう想像していくのかということが大事だ」と述べている。「社会福祉は文学である」というのは大胆に思われるかもしれないが,その根拠を聞いてなるほどと納得できる。それにならって,「精神保健は文学である」と言っても何ら不思議ではない。その理由は,やはり,人間の精神的健康やそれを支える制度を考えるうえで,まさに「人の生活のにおい,心理状況」を想像する感受性が必要とされるからである。精神医学も同様な面を持っているのは当然で,精神医学者と文学者を両立させた人として北杜夫や加賀乙彦が有名である。それはともかくとして,活字文化の粋である文学を読むことによって,社会福祉や精神保健に必要な想像力が養われるということが大切なのである。 ●通信制は「本を読む」 通信制ではテキストや参考図書を読むことが必要となる。通信制大学院での精神保健では,現在,エリクソンによる自我同一性の確立の問題とライフサイクル論に基づく人間論を中心に展開しているので,必読である『幼児期と社会』をはじめとして,彼の著作を読まねばならない。『幼児期と社会』は訳本ではあるが2冊ある。これは物語風に書かれた本なので,いかにもテキストといった本よりも興味をそそるであろうと思って選択したが,読み通すのに大変な努力を要しているようである。私自身もそれを懸念していたし,実際そのようなコメントを聞いている。しかし,全体としてその理解の程度は私が予想したよりはるかに高かったことも事実である。 ●読ませるための本選び私は小さい頃は本を読むのも勉強するのも嫌いであった。高校2年の時に友人に勧められて文学を読みだした。以来,今日まで乱読傾向が続いている。本を読んでいると,「我を忘れる」,「文章からイメージされる光景を自分勝手に描いている」,良い本を一冊読み終えると,「満足感と達成感を感じる」ことなどが楽しい。もちろん,映画のビデオやTVでのスポーツ番組も人の何倍も観る方でもある。しかし時として,TVのように自分の意志にかかわりなく飛び込んでくる映像などは,奥行きのない壁みたいに感じられて,押しつけがましく感じることもある。しかし本を読むときは,自分の好きなだけ奥行きを膨らませることができる。その奥行きは,自分が感じた「生活のにおいや心理的状況」によって満たされている。このような奥行きを作る想像力が,人と接する時や,社会を考える時に無意識に働きかけてきて,問題解決に役立つことが多い。だから精神保健の場合,余程の目的がない限り箇条書きされたマニュアルのような本はあまり使いたくない。それよりも,さまざまな状況における人間関係や社会についての想像力を読者に形成させてくれるような本を読ませたい。そのような本を吟味しながら選ぶのも教師としての奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】な役割の一つだと思っている。 |