VOL.14 NOVEMBER 2003 【学習サポート】
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【BOOK GUIDE】 |
【BOOK GUIDE】素足の心理療法 みすず書房心理療法家として実践の現場に立つ際の基本的姿勢が,著者の数十年の臨床経験にもとづいて述べられています。古今東西の文学などからの引用が散りばめられ,初心者には難しいところも多くあります。しかし,「人間は喪失の上にこそ,またささやかな夢をきずくことができるのである」(p.57),「沈黙に心を向けることは,ことばを越えたところにある現実に気がつくことである」(p.3)など美しい文章に出会うことができます。難しく感じる箇所はとばしながらも,何度も繰り返し読むに値する本です。 「心理臨床にはリアリズムのみ必要なのであって,何のロマンチシズムも,ましてやセンチメンタリズムもあり得ない」(p.145)とあります。しかし,著者の患者を見る視点は,「総じて心理療法の対象である患者は,なんらかの逆境に投ぜられて,それを切抜けることができなかった人といってよい」(p.132),「患者と生活者への分れ道は文字通り紙一重」(p.134)など,とてもあたたかいものです。人間そのものの弱さ?不完全さへの諦めや,すべての存在者に「意味」があるという意識が著者の根本にあるようです。 筆者の霜山氏は,ナチスの強制収容所の体験を記した『夜と霧』(V.E.フランクル著)の訳者としても知られています。また,『霜山徳爾著作集』も学樹書院から刊行されており,本書よりもう少しわかりやすい「明日が信じられない」「人間とその蔭」が著作集第1巻に収められています。関心をもたれた方は,そちらもどうぞ。 ■霜山徳爾著 『素足の心理療法』 みすず書房,新装版2003年発行 (2500円+税) 引用ページは1989年発行の版による (Pon) |