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VOL.15 DECEMBER 2003

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[精神保健福祉論] 寄せては返すレポートの波乗り

教授
遠藤 克子

●はじめに

 精神保健福祉論IIIのレポート添削とスクーリングを担当して,受講生全員に当てはまるわけではありませんが,気付いたこと,印象に残ったことを少し書いてみます。この科目は精神保健福祉士受験資格の指定科目であり,受講生全員ではありませんが,受験資格取得を目指している方々もおります。そこで,復習のようなことになりますが,はじめに精神保健福祉士の存在意義と今後について若干述べたいと思います。
 精神保健福祉分野の今後大きな目標として,国はこれからの10年間に精神科病院に入院中の約33万人の中から,社会的入院と認めた約7万2千人の方々について社会復帰と地域生活支援をすることを計画しております(新障害者プラン)。この計画を具体的に展開していくにあたり,福祉サイドの人材として,精神保健福祉領域のソーシャルワーカーとして,精神保健福祉士の国家資格が制定されました。この存在意義を実際的?現実的なものにするにはそれなりの時間がかかるでしょう。
 精神保健福祉士の資格に限らず,新しい福祉の資格にはそれに見あう実践能力がないと現実的には仕事はなかなかできません。仕事ができなければ社会的評価は定まらず,向上もせず,社会的認知は広がりません。関係者には知られていますが,一般には「精神保健福祉士って何なの?」「何する人?」「どういう職場にいるの?」というのが現実に近いでしょう。社会福祉士もそういう状態ですね。
 ということは,利用者に役立つ資格とはならず,有資格者にとっても絵に描いた餅同様になることが心配です。何を言いたいのかというと,充分勉強して,経験を積み,利用者の社会復帰と地域生活支援に役立つ人材になって欲しいということです。大学教育はそのスタートですね。受講生の中には資格をとるだけ,実力は充分という方々もおり,心強い限りです。

●1 レポートのテーマのひねり?

 精神保健福祉論Iは精神保健福祉論IIと比べ,内容としては理論的なところが多く,レポートのテーマも「障害概念」に関するものがあり,これはかなりの方々が苦戦されています。再提出の方のほうが多いのです。
 このテーマは2つのサブテーマから構成されています。皆さんの中にはどうやら,レポートのテーマの中にある2つのサブテーマを関連づけて,組織化させ,まとめ上げるということを要求されているような課題は苦手な方が多いようであると見ました。あるいは慣れていないとか,久しぶりレポートを書くことになったといったほうがいいのかもしれません。
 テーマの出し方を今後考えなければならないかとも反省もしました。しかし,すらすらとできている方はもちろんいます。再提出,中には再々提出でそれを何とかクリヤーしている方もいます。
 そこで,今は次のように考えています。精神保健福祉士にとって,「人とかかわる力:人間関係形成力」とともに「アセスメントする力」「記録する力」が欠かせません。この力を養成?訓練する作業の一端を担っているのがレポート作成の作業と考えています。情報?知識を組織的にまとめ上げるのは「アセスメント」の基本です。これこそ,大学に入った甲斐があることを示すテーマではないか,ここで,苦労することは皆さんの実力向上に役だつものであると。

●2 レポートって窮屈?——テーマに添って書くということ——

 レポートに限りませんがあるテーマが示されるとそれに触発されて,自分の想いをはじめ,いろいろと書きたいことが出てくることがあります。しかし,通信教育のレポート作成はテーマに添って論理的,客観的に書くことや,紙数など,つまり一定の枠があって,その範囲でまとめ上げるという作業です。同じようなことはスクーリング後のテストにも見られます。感想文ではないので自分の思うようには書けない不自由さがあります。この一定の枠内で自分の書きたいことをまとめ上げるという作業も慣れていないとなかなか思うようにいきません。まして,自分になじみの薄い科目やテーマであれば,なおのことです。
 しかし,再提出,再々提出にもめげず,挑戦し,あるいは,次々と単位を修得していくうちに次第に,皆さんのレポートが少しずつよくなってきました。これはテーマをよくよく把握し,内容についてテキストをはじめ,沢山の参考書を読み,考察し,文章については推敲を重ねる,あるいは,何回も書き直した,つまり,学習?練習の成果と推測しています。この作業はご自分でこつこつと遂行する以外方法がありません。これも実力向上への道ですね。とにかく,指定したテキストをじっくり読んで,テーマに添って,論理的?客観的にまとめ上げれば,最低ラインは突破するはずです。

●3 スクーリングはささやかな出会いの場?

 スクーリングは休日?祝日の集中講義になるので,教師?受講生の双方の努力なしには成立しないということをしみじみと実感します。また,さまざまな交互作用もあり,スクーリングの意義を実感します。
 さて,スクーリングで通信教育学生の意欲や熱心さがひしひしと伝わってくるとこちらも話に熱が入り,少数ながら早く終了して欲しいというメッセージも伝わっているのをつい無視してしまい,休み時間まで食い込んでしまうこともあります。出席票の裏に,何でもいいから書いてくださいといつもお願いしていますが,そのなかで,「熱心なのはわかるけれど,時間を守って下さい,疲れます」とちょっぴり苦言を呈されてしまうこともあります。そのほかの出席票裏のコメントの一部を紹介しましょう。
 「授業の内容を聞いて,これからの仕事にすぐ役に立つので,励みになる」
 「テキストを自分で読んだだけではよく理解できなかったのでスクーリングに参加してよかった」
 「精神保健福祉士の資格は第一義的には利用者のためであると聞いて,はっとした」
 「早口で聞き取りにくい」
 「ビデオを利用して,話も具体的でわかりやすい」
 「抽象的な内容でわかり難い」
 「困難な仕事と聞いて,かえって,やる気が出てきた」
など……

 まずは,単純にこちらも喜んだり,反省したりという具合です。あとで,じっくり考えて,その後の授業の質的向上に役立せる努力をしているつもりです。何人かの受講生の顔と名前が一致してくるとこちらも嬉しくなります。私自身の記憶力が回復してくることでもあるので。それは受講生のアピール能力に感心することでもあり,見習わなければと思い,いくつになっても,学びは至るところにあると改めて思います。
 私にとってはさまざまな制約の中でのささやかな出会いですが,受講生の皆さん同士の出会いがあちこちで始まっているのを垣間見るのはまた,私にとっても嬉しくなることです。大学で学ぶ意義,スクーリングの意義はここにもあるのですね。

●おわりに

 新しい資格が真に社会に必要な資格として成長するには,有資格者の数量の拡大と質的向上,配置制度(今は,ほんのすこしですね)が欠かせません。なぜ,その資格が制定されたのか,常に原点を確認して,進むことが大切です。7万2千人の人々が10年といわずに,一日も早く地域でその人らしく生きていけることを期待し,とりあえず,今,何をすればいいのでしょうか。皆さんはせっせとレポートを書き,わたしは繰り返し寄せては返す波のごときレポートの添削に精を出すことでしょう。
 お互いに健康には充分気を付けて前向きに進みましょう。

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