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VOL.15 DECEMBER 2003

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[OB MESSAGE] 設立20年をスタートに

特別養護老人ホーム 偕生園 施設長
佐藤 哲彦

●学生時代の体験を思う

 昭和53年入学からの4年間は,日本拳法愛好会と神宮球場での初應援から應援團に所属し,夜は社会勉強(アルバイト)と一日24時間を時間刻みに動き回って様々な体験ができました。
 昭和57年卒業し,聴講生として在学しながら写真植字(印刷植字?今はパソコン)スクールに通い基礎課程を修了し,同年11月に帰省後地元新聞社系列の広告デザイン会社に臨時採用していただき年始広告の多さと締め切り期日に迫られ翻弄されながらも充実していました。

●20年間を振返り

 市内4カ所目の新設施設の職員採用試験を勧められ受験,国定公園男鹿半島寒風山山麓の木々に囲まれた現在の施設に,昭和58年4月から生活相談員として勤務しました。施設長補佐?事務局長を経て,平成3年4月から常務理事?施設長に,今年10月に20周年の記念事業を終えたところです。
 施設の開設当初は,経験者もおらず試行錯誤を繰り返し苦しみながらも充実した日々でした。先輩施設や大学の諸先輩,同期の友人からの多くの協力を得て基礎作りし,地域の要望に応じて10年を期に市内初で住宅振興地内に単独設置の「かいせいデイ?サービスセンター」を開設し,一法人二施設とし既存の福祉サービスと共に在宅サービスの充実を図ってきました。現在は,平成12年4月の介護保険施行時に2事業を新設し,開設当初の3倍のスタッフ64名で次の8事業を展開しています。
 ?特別養護老人ホーム偕生園(50名)
 ?ショートステイ偕生園(8名)
 ?かいせいホームヘルパーステーション
 ?かいせい訪問入浴介護サービスステーション
 ?かいせいデイ?サービスセンター(30名)
 ?かいせい訪問看護ステーション
 ?かいせい居宅介護支援センター
 ?男鹿市在宅介護支援センター(地域型)
 利用者の方や地域の方々が,「どのように暮らしたいのか」との視点を持ち,こちらから出かけて皆さんと接する機会を設け,法人のできる範囲で徐々にサービスを増やして実施してきました。

●創造と工夫

 開園まもなく15居室をA棟?B棟の2棟(現ユニットのような考え方)で日常生活の対応を試みました。お酒の飲める「一杯コーナー」を設けたり,お部屋ごとに会議室や中庭での昼食会(当日のメニューにお好み一品)や皆で作る鍋料理会などをおこなったりしました。備品がそれほど整ってはいませんでしたので,職員の自宅から借用したりして,何もなかったところから利用者の方々と一緒に作り出してきたことが,現在の援助の中に生かされています。
 20年前の基準で建設された偕生園は,最近の新設施設のように一人あたりの居住スペースも広くなく,ホールは狭く,ベッドサイドのカーテンもない状態でした。ハード面では不便な個所もたくさんありましたが,使用する方の利便性を考慮してベッドの配置を変えたり,ホールには折りたたみ可動できるテーブルを備えたり,ベッドサイドカーテンは汚れても拭き取りが簡単なシャワーカーテンを天井吊りにし,ベッドと同じ床上の高さにするなど,利用者の方に幾度も合わせ調整しながら改修を行い,不足な部分は職員の足でカバーするように工夫しております。
 平成11年度の大規模修繕工事(屋根,外壁,居室,浴室等)の時には,使用する利用者と職員の希望?要望(特に浴室?浴槽)に対して応えられるようにと,1年以上の計画期間を設け,他施設の見学から得たヒントを盛り込み改修工事をしました。

●20年目のスタート

 措置から契約へ,運営から経営へと利用者側も事業所側も翻弄されながら介護保険がスタートして3年6カ月を経過しました。この期間に介護保険料や介護報酬の見直しと運営基準の改正等々事業を軌道に乗せることに日々時間を奪われる毎日でした。事業所での利用者が選択できないサービスの囲い込みや競合する事業は行わない,採算が合わないと事業撤退をするなどいろいろありました。
 利用者本位,日常生活を支援し自己実現へのかかわりを逸しないように基本を確実にし,培った経験に根拠を持ち,サービスを求め必要とする方々に対して,インフォームドコンセントを確実に実施し,複数の提供サービスや援助方法の中からチョイスができるように私たちは近隣事業所と情報交換し連携を図り実行しています。
 職員の資質向上の一環として,私も職員と一緒に毎年度目標を定め自己研鑽として,福祉関係の有無を問わず積極的に様々な資格取得や研修に参加できる機会を設けています。
 また,社会福祉法人として介護保険の制度には該当しない方々や介護予防?地域支え合い事業に積極的に協力できる体制づくりと,20年を期に高齢者サービスに加えて子どもから高齢者まで,すべての方々が地域で安心できるようにサポートできる拠点づくりを中長期計画に盛り込み展開することを新たな節目のスタートにしました。

●自分自身を相手から知る

 自分自身を知ることは,非常に難しいことのひとつである。鏡に映る顔や姿は,本当の自分だろうか。自分自身が知っている顔とまわりが知っている顔が「左右反転」しているからで,自分の知っている顔は鏡に映った顔であり,微妙に違った左右を入れ替えると全く印象が変わってしまい,紛れもなく「私」なのだがどうしても認めたくないものです。テープから聞こえる自分の声を素直に認めることができるでしょうか。
 顔や声でさえ十分に把握していないのに,自分の心理まで正確に理解できないので,一手段として他人との関係の中から見いだそうとすれば,自分が相手を良く知る,知ろうとする能力が要求される。しかし,人間を理解することも難しいし,人間関係を理解することはなお難しい。それは,もちろん人間の複雑さにもあり,自分自身の経験に基づいたパターンに当てはめようとする側にも要因がある。パターンに合致すれば理解できたと認識し,異なる場合は理解できずに混乱してしまい異なるものとして排除しがちである。受け入れる側として固定観念だけではなく自在に変化できるように心がけることにより相手の理解度は増し,自分自身の器も大きくなってくる。今まで千差万別の「価値観」を持つ方々と接して得たことは,どのように受け止めるかは自分の気持ち次第であり相手を理解しようとする,「人を思う」ことに通じることである。
 自分で目標を定めて現在努力をなさっている皆さん,まわりの協力があって「学ぶ」ことができることをお忘れなく。

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