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【現場から現場へ】

[関連施設紹介]
せんだんの杜なかつやまでの取り組み
—自分らしく暮らしていくことを支える—

せんだんの杜ものう 中津山第一サービス課
二瓶 貴子

 せんだんの杜なかつやまは,前回紹介したせんだんの杜ものうのサテライトとして平成15年4月1日にオープンしました。せんだんの杜ものうから車で5分のところにあり,桃生町立中津山第一小学校のすぐ隣に建っています。大きな窓からは,子どもたちの姿がよく見ることができ,休み時間や放課後にはにぎやかな声が聞こえ,お年寄りはいつも目を細めてその様子を眺めています。
 せんだんの杜なかつやまでは,介護保険の居宅介護支援事業,通所介護事業,痴呆対応型共同生活介護事業のほかに,自主事業でナイトケア(お泊り),桃生町からの委託で学童保育を実施しています。サービスエリアとしている中津山第一小学校区の誰もが,施設に移り住まずに,最後まで住み慣れた自宅や地域で自分らしく住み続けられるように,支援をしていきたいと思っています。
 せんだんの杜なかつやまは,「通って」「泊まって」「家にも来てくれて」「いざとなったら住むこともできる」機能が備えてありますが,「サービス」という枠に「利用者」を当てはめるのではなく,その人(利用者)が自分らしく暮らしていくために,何を必要としているのか,それに対し,我々はどう支えたらいいのかを考えながら,8カ月やってきました。
 例えば,せんだんの杜なかつやまのデイサービスの利用者がお泊りを利用することになりましたが,毎日「家へ帰りたい」と席を立ちます。それを「ただの帰宅願望」としてとらえて,なんとか説得をして施設の中に留めておくことに時間や労力を割くのではなく,「帰りたい」と訴えたときに,車に乗せて,自宅に行ってみます。自宅でご家族に「なぜお泊りをして欲しいのか」を話されることで(ちなみにこのときの理由は介護者が湯治に行ったためだったのですが)納得し,夜はぐっすり眠って過ごされました。結果的に,この方はお泊りの期間中毎日自宅へ帰っていたことになりました。かつてショートステイを利用していたときは,夜はなかなか眠れず,障子戸を壊すこともあった方なのですが,毎日たった5?10分の帰宅で利用者自身が納得して「お泊り」が継続できたのです。

中津山第一小学校の児童に「カルタ」を教える利用者の方々
中津山第一小学校の児童に「カルタ」を教える利用者の方々

 また,在宅の利用者と同様に,グループホームにお住まいの利用者の方にも,こちらに移り住む前の生活やなじみの関係を大事にしたいと思っています。
 現在,桃生町外の女性利用者がグループホームに住んでいますが,パーマをかけに行くのは「せんだんの杜なかつやまの近くにある美容院」ではなく,車で30?40分かけて行く「イスに座れば思い通りの髪型にしてくれる地元の行きつけの美容院」なのです。
 グループホームへ移り住むことで「なじみの関係」や「生活圏」を邪魔してしまうのではなく,今まで通り続けられるように支援をしたいと思っています。ご家族との話し合いで都合が合えば,可能な限り,たとえ短時間でも自宅で過ごせる時間を作るようにしていて,中には,日中自宅へ帰り,自由気ままに過ごし,夕方に杜に戻られる方もいらっしゃいます。
 今,ユニットケアに続き,「小規模多機能ホーム」,「小規模多機能ケア」が注目されていますが,一箇所で利用者にさまざまなサービスが提供できるということが「小規模多機能」ではなく,利用者が自分らしく暮らしていくために,私たちが臨機応変にそして柔軟にその方の思いに合わせて,支えていくことができることが「多機能」ではないかと思っています。
 自分らしさとは,その人その人がもつ,ちょっとした「こだわり」ではないだろうかと感じています。それは,例えば「髪を切るならこの美容院」の方もいれば,「鮨屋でおいしい鮪を食べたい」方もいるだろうし,「ドライブに行くのなら思い出の土地に行きたい」という人もいて,実にさまざまであると思います。
 心身の状況の変化や住居が変わっても,その人が生活の中にある「こだわり」を持ち続けられるような支援をこれからもしていきたいと思います。

隣の畑にて
隣の畑にて。「小規模多機能ケア」のキーワードは「地域暮らし」……

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