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VOL.21 AUGUST 2004

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援助者必携 はじめての精神科 医学書院

 看護職や福祉職は,対人サービスに疲れ果てて無気力になってしまう「バーンアウト」(燃え尽き)に陥りやすいと言われています。それを防ぐひとつの方策が,援助職としての基礎をしっかり身に付けつつ,利用者との自分なりの接し方のスタイルを築くことだと思います。
 本書では,精神科医の春日武彦氏が「援助職として,どう精神障害者と接すればよいか」についてのアドバイスを,とても読みやすい口調で語ってくれています。精神保健福祉士をめざして勉強している方,さらにはすべての対人サービス職従事者にとって,すごくおもしろくて,役にたつ本です。

 たとえば,「しんどくならないためのヒント」などとして,次のようなことがあげられています。
 (1) 精神を病むということのキーワードは「優先順位」。「優先順位が,常識や良識から逸脱」していると理解すると,状況の把握がよくできるのではないか(p.41)。
 (2) 援助者が,ちょっと手を出したから,たちまち問題が解決するなどと思うほうがオカシイ。問題を解決するというよりも,むしろ「化学反応を促す触媒」である。「何もしてない」という非難を恐れず,「待つ」ことは大事である(p.30?39)。
 また,中盤では,統合失調症,うつ病,痴呆,人格障害などの病気ごとに,患者の苦しみとつきあい方を紹介してくれます。とくに,他人の気持ちを推し量ることができず,わけのわからないクレームをつけてきたり,突発的な攻撃性を示す「人格障害」者には,対人サービスを行っている人ならば,おそらく一度は悩まされたことがあると思います。「人格障害」者との接し方は,とても参考になりました。
 後半部分では,「患者さんとの話し方」「妄想を聞いてもいいのか」「立腹されたら」などのQ&Aが掲載されています。

 営業マン向けの「顧客との話し方」のようなハウツー本はたくさん出ていますが,福祉職対象にも,本書のような良質のハウツー本があるのは,よいことではないでしょうか。援助者が疲れ果ててしまわないために,という視点があり,患者の考え方がよくわかるように解説されており,そして深い学識にもとづきながら具体的な場で役立つようなアドバイスが満載の点で,お奨めの一冊です。
 本書を出している医学書院は,固い医学書の出版社として知られていますが,他にもナラティヴ?アプローチを紹介した『物語としてのケア』,北海道の「浦河べてるの家」という有名な精神障害者の作業所?授産施設のユニークな取り組みを紹介した『べてるの家の「非」援助論』など,福祉関連の本も刊行しています。合わせて紹介しておきます。

(Pon)

■春日武彦 『援助者必携 はじめての精神科』 医学書院,2004年 定価1890円(税込)

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