*With TOP > VOL.21 AUGUST 2004 > 
* *

VOL.21 AUGUST 2004

【学習サポート】

【現場から現場へ】

【9月科目修了試験のご案内】

【秋期スクーリングI?IIのご案内】

【10月生進級手続きのご案内】

【通信制大学院コーナー】

【お知らせ】

【資格?免許状取得のために】

【シリーズ?現場実習】

【BOOK GUIDE】

【シリーズ?東北】

【ひろば】

* * * *

【ひろば】

ボランティア体験

 前号の池田悦子さんのお話しに刺激を受けて,通信教育部職員の私も休暇をとって,「精神障害者小規模通所授産施設」でボランティアをしてきました。精神障害者の施設に行ったのは初めてでしたが,利用者の方,職員の方によくしていただき,とっても楽しく,かついろいろなことを教えてもらえた2日間でした。
 誌面を借りて,その様子をレポートします。


●ボランティア先の見つけ方
 子どもを預けている保育所の保母さんの知り合いが,授産施設で働いておられるということを聞いたので,紹介してもらいました。

●事前の準備
 仙台市が出している「はあとぺーじ」(http://www.city.sendai.jp/kenkou/shougai/heartpage/)で,その施設がどんなことをしているのかを調べていきました。また,教科書『精神保健福祉論』のp.73「小規模作業所などの課題を整理する」とか,p.224の「精神障害者社会復帰施設の概要」の表を読んだりしていきました。あと,よく出てくる「バイスティックの7原則」のなかの「クライエントを個人としてとらえる」「クライエントを非難しない」ということだけは頭に入れておきました。それから,小規模作業所を紹介するビデオを見ていきました。

●1日め朝
 知っている人が誰もいない場所に行くので緊張しましたが,やさしそうな施設長さんが笑顔で迎えてくれて,ホッとしました。施設長さんから,施設の概要を簡単に説明してもらいました。30人ぐらいの登録メンバー(利用者)がいるが出勤は自由なこと,メンバーの給料は,売り上げから材料費?仕入れ費などを引いた部分を働いた日数に応じて配分し,20日間出勤して1万円ぐらいの月が多いこと,小規模通所授産施設になったとはいえ補助金はすごく少ないことなど,お金に関することも率直に教えていただきました。
 説明の後はメンバーの方の団らんスペースにいてください,ということで,前号の池田さんのお話しにあったことを意識して,出勤してくるメンバーさんに「あいさつ」はするようにしました。

●ミーティング
 9時30分過ぎに,朝のミーティングが始まりました。司会もメンバーの方がしていて,驚きました。ひとりひとり朝のあいさつをしていきます。ぼそぼそと一言だけの方もいますし,「二日酔いです」とか「テレビつけっぱなしで寝てしまいました」とか,笑わせ上手な方もいます。
 それから午前中にどの作業をするかを自分で選んでいきます。「畑」に行く人,「布作業」をする人,「一輪挿し」をつくる人,しごとはせずに「フリー」を選ぶ人など。「畑」に行くのは車の定員のために調整の必要があって,そこもワイワイガヤガヤ,メンバーさんどうしの調整で決まっていく様子が好ましく思えました。

●午前の作業
 10時から作業時間。私は「布作業」班に入りました。男性でもアイロン使ったりミシンかけたりして,「のれん」や「ポーチ」なんかをつくっています。「アームカバー」が売れたので,次の商品を試作中とのことでした。几帳面な方が多いこと,「売れるかどうか」を意識しながら取り組んでいることが驚きでした。
 私も最初は見ているだけでしたが,スタッフやメンバーの方に仮縫いやミシンの使い方を教えてもらって,自分でも簡単な袋をつくらせてもらいました。
 また,20歳前後の若い方々から60歳以上の方々までが,年齢を超えて,教え合ったり,話し合ったりしているのもほほえましかったです。

●お昼?午後,2日めの作業
 お昼もメンバーさんといっしょ。隣に座ったのが午前中畑に行った人だったので,どんなものを収穫しているか教えてもらうなどから,コミュニケーションをとっていました。
 午後は,施設が請け負っている,玉ねぎ袋詰めとかをいっしょにしました。
 2日め午前は,畑で収穫した野菜や施設でつくったものを販売してくれるお店への配達の車に同乗しました。
 前号の池田さんのお話しで,「ボランティアとして,ただそこにいるだけでよい」とあったので,そのとおり,本当にただその場にいて,作業したりお昼食べたりしながら,雑談しただけでした。自分のことをオープンに話してくれる人もいたり,話しかけてきてくれる人もいたりで,楽しかったです。

●利用者と接して
 授産施設に通っている方ですから,精神障害の症状も落ち着いている方が多いのだと思いますが,いわゆる「精神障害者はこわい」というような偏見はまったくなくなります。
 メンバーの方々と接して,前号の池田さんに聞いた「ふつうの人たち」,学生のIさんに聞いた「やさしい人たち」,Oさんに聞いた「個性的な人たち」という表現は,それぞれそのまま当てはまると感じました。すごくお話し好きの方もいますし,寡黙な方もいました。詩集を出している方もいらっしゃいました。
 自宅から通っている方が多かったようですが,一人暮らしの方や援護寮(生活訓練施設),グループホームに住んでいる方もいらっしゃいました。私が大阪出身だというと,住んでいたことがあると言われた方もいました。みなさん,いろいろな経歴をお持ちなのかもしれません。
 メンバーさんどうしのお話しを聞いていると,「厚生年金に入っていた方は,国民年金の方より障害者年金が多い」とか「市バスの無料パスがもらえる」などの福祉サービスの一端を知ることができました。

●職員の方と接して
 作業所によっては,スタッフが授産品や請負仕事のかなりをこなして,売り上げにしているところもあると聞きましたが,私の行ったところは,作業すべて利用者主体で行っていました。職員の方々は,手や口を出したくなることもあるだろうに,ご苦労がしのばれました。
 また,メンバーさんが帰った後などに,職員の方には私の質問に,丁寧にお答えいただきました。先述のメンバーの給料の配分のしかたなども,試行錯誤しておられるようでした。小規模作業所から授産施設になって,役所に提出する書類などは増えたが,社会福祉法人扱いになって,運営の安定性は高まったなどのお話しもお伺いできました。
 2日め午後は,職員研修会に連れて行ってもらったのですが,仙台市泉区保健福祉センター 障害高齢課の岡崎茂さんのお話しをお伺いすることができました。「あらためて精神障害者のサポートを考える──本当にサポートは求められているの?」と題して,作業所でスタッフは指導員と呼ばれることが多いが,利用者を“指導”するという姿勢でよいのだろうか,という基本的な問いかけもあり,興味深く聞くことができました。
 岡崎さんは,「精神保健福祉援助実習」の実習生を受け入れた経験も豊富のご様子で,実習生へのアドバイスもありましたので,ここに転載させていただきます。

  • あなたもメンバーも同じ人間だし,一歩下がって「何かを教えてもらおう」という姿勢で,より相手の警戒感を解いた時が,声もかけ易いのではないでしょうか。
  • メンバーに無理して声がけしなくてもよいのではないでしょうか。人との会話って,無理してするものではないでしょう。
  • 他人の話を真摯に聞く姿勢は大ですが,「……?」という思いを持ちながら聞くことが精神保健福祉士に求められるのではないか,と思います。そうでなければ,相手に巻き込まれてしまいかねません。
  • スタッフも只の人です。何もスタッフが立派なことを言わなくても良いと思っています。しかし,参加者にとってスタッフが只の人ではないと思いたいという部分があることも事実のようです。その時にどぎまぎしないで,自分をありのまま出せるようになると良いと思います。

 以上,2日間という短い時間でしたが,本当によい経験ができました。また,行きたいと思っています。

(Pon)

1つ前のページへ*このページの先頭へ

*
*
(C) Copyright Tohoku Fukushi University. all rights reserved.
*