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VOL.20 JUNE 2004

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仙台七夕

 仙台の夏の風物詩といえば「仙台七夕」。花火大会が催される8月5日の前夜祭に始まり,8月6日から8日にかけて色とりどりの七夕飾りが街の通りを埋め尽くします。毎年300万人もの観光客が仙台七夕に訪れます。歌手で本学の客員教授でもある,さとう宗幸氏の「青葉城恋唄」には,揺れる七夕の飾りに過ぎし日へ想いを馳せる叙情が歌われています。特に仙台人にとって,郷愁を誘う名曲です。
 七夕の風習は,中国に伝わる織女(しょくじょ)と牽牛(けんぎゅう)という星が年に一度だけ会うという星合(ほしあい)の伝説が,織姫星(おりひめぼし)にあやかり,裁縫,手芸,書道などが上達するようにと祈願する「乞巧奠(きこうでん)」という風習となり,初唐の文化の影響を強く受けた白鳳時代(7世紀後半)に日本に伝えられ,それが日本固有の機織りの祖神天棚機姫命(あめのたなばたひめのみこと)と結びついたといわれています。「たなばた」の呼び名の元はここにあります。持統天皇の御代(686?697年)に,公卿たちなど宮廷を中心に,旧暦の7月7日に宴を楽しんだという記録があります。京都の公卿や武家の間の行事として,大阪地方,東海道を東へと伝わり,江戸で形づくられて東北に入ったとされています。江戸時代には,すでに町人などの民間に普及しており,女の子は技芸の上達を願って,男の子は学術に秀でるようにと字の上達を願って短冊が飾られました。
 仙台七夕は慶長6年(1601年)伊達政宗が仙台城に移り,武士や町人たちも前の居城である岩出山から仙台に移り住んでから始められたといわれていますが,確かな時期はわかっていません。
 七夕の飾りは地域によって様々です。仙台七夕の飾り物には,7つ道具といわれる短冊,吹流し,針仕事の上達を願い病気や災害除けの身代わりとなる紙衣(かみぎぬ),長寿と家内安全祈願の千羽鶴,豊漁豊作を願う投網(とあみ),清潔心と物を大切にする心を養う屑籠(くずかご)を必ず飾ります。七夕飾りというと,誰もが子どもの頃に笹竹の枝に色紙で様々な飾り付けをしたイメージを持ちますが,仙台の七夕飾りは折り花で飾られたクス玉に長い足のついたクラゲのような形状の吹流しが主となります。初めて仙台七夕を見た人は,どことなく違和感を覚えるかもしれません。現在の吹流しの頭にクス玉が付くスタイルが登場したのは,戦後になってからだそうです。
 仙台七夕は,元々東北にあった民間信仰やお盆の精霊流し,みそぎの風習などが絡み合って出来たといわれています。菅江真澄(すがえますみ)(1754?1829年)という江戸後期の紀行家?随筆家が,秋田地方を旅した際,「山の神の幤」という民間信仰の神の依代をスケッチに残しています。なるほど,木から吊るされたわら製の「山の神の幣」は,クス玉を取り除いた仙台七夕飾りに形状がそっくりです。
 東北の祭りがどこか切ないのは,華やかさ勇壮さの裏に秘められた,東北の民に綿々と受け継がれたはるか遠い記憶のせいかもしれません。
 仙台七夕には必ず雨が降るというジンクスがありますが,今年はどうでしょうか。

(Y.O)

【参考文献】
 村昌子,『エリアガイド6 仙台?松島』,昭文社, 1991, p.33.
 宮城県図書館協会編,『郷土みやぎの姿』,仙台宝文堂, 1985, p.70?72.
 国分直一?高松敬吉編,『東北の民俗?海と川と人?』,考古民俗叢書,1988,p.63.

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