みなさんこんにちは。

今日はすばらしくいい日で、私も仙台で朝起きて、「やあ、いい天気だな」と思いましてね、それで、今日は両祖忌なんですけども、皆さんお勤め下さったので、両祖様もわれわれがここにいることを喜んでくださっていると思います。

皆さんよくご存知の通りで、道元禅師の月見像というのがあります。あの、ちょっと月を見上げている像ですけども、私の本の中でもよくこの像を使わせてもらっています。これは私の知り合いの田中真海和尚が住職をしている福井の宝慶寺という寺がありまして、そこにおそらく懐弉さんが描かせたものなのかもしれませんが、ひとつあるわけです。それからもうひとつ、永平寺に道元禅師のお姿が描かれたものがあって、これもやはり、月見像というものなんですね。で、道元禅師は月見というものがものすごく好きで、月を見るということで仏法の世界を感じ取るということのようです。

実は私も、永平寺に安居したのは昭和四十年のことでしたが、ある晩、坐禅堂で坐禅をしていたときに、僧堂の外が昼のように明るいんです。これは一体何だろうと思って、坐禅終わって見たら、満月だったんです。これはすごいなと思って、みんなが寝静まった後でひそかに愛宕山に登ったんです。ひとりで。あの時は体力あったんですね。すごい勢いで登っていって見たら、永平寺がみんな昼間のように見えたんです。あの時の感激はいつまでも忘れることができません。すばらしい満月の夜でした。それで、道元禅師の月見像に、自賛の句があるんです。それがこういう句なんです。「気宇爽清なり山老の秋、天井を覰るに驢皓月浮かぶ、一も寄ること無し、一も収めず、任騰騰として粥足飯足なり、活潑潑として正尾正頭なり、天上天下雲自水由なり」

どういうことを述べているかというと、「気宇爽清なり山老の秋」、わが気根も胸中もまるで晩秋の山の気配のように爽やかである。「天井を覰る驢皓月浮かぶ」、その心境はといえば、天を仰いでみると天は天そのもので、まるで井戸を覗いた驢馬がその映った姿を無心に見ているようである。また皓々たる月が無心にその姿を映すようである。何にとらわれるのでもなく、あるがままにそのままに。意図的に造作をせずに、仏法の運びゆくままに、われわれはお腹も足りている。それでいて実に生き生きとして、終始整然としている。それが今の姿である。そして、天の雲が自由なように、「天上天下雲自水由」。「雲水」というのは、修行僧のことを雲水といいますが、雲のごとく流れ、水のごとく行くというのが「雲水」の語源なんです。天の雲が自由なように、地の水が沢になって流れるように、まさに私自身があるがままの雲水そのものである。

この間私は本校の提携校である東北師範大学の方へ行きましたけど、学長の呂先生というのは写真家でもあるんです。それで、「行雲流水」というタイトルの写真集を出版しているんです。「これは禅語からとったんですか」って聞いたら、「いや、そんなわけじゃないんだ」っていうんで、私が「僧侶のことを雲水って言うんだ。雲のごとく水のごとく」って言ったら、「まさにその通りだ」と。「私は雲を撮るのも好きだし水を撮るのも好きだ」と。そういった話をしながら帰ってきました。

今日はあまり天気がいいんで、両祖様の忌日であるということを忘れてしまうくらいですね。どうもご無礼いたしました。