皆さんこんにちは。

足痛くない？大丈夫？大丈夫だね？あと三時間かかるから。（笑）そのまんま、足崩さないでいるんだよ。なんてことは言わないんだけどね。（笑）

今日は斉藤先生の方からお話があったように、「両祖忌」という儀式です。この両祖忌というのは、道元禅師と瑩山禅師のお亡くなりになった日です。これを祈念申し上げて、両師さまに感謝を申し上げる日です。そして、今、出班焼香と言いましたけども、これは曹洞宗の儀式として最高の礼をもってする儀式となります。見ていてみなさん「一体何をやっているんだろう」と感じたと思うんですけど、わけのわからないことをやっているわけではないんです。私どもが今日生きてここにあるこの感謝を、ひとつひとつの動作で表しているのです。それを感じていただければと思います。

今日私がここに来て、「法語」というものを唱えました。この法語というものは先ほど言いましたように、両師様に感謝の気持ちを述べるものです。今年の夏はどういうわけか、仙台では雨の日が非常に多かったのですが、台風も過ぎて昨日はいい天気になりました。それから今日も夏のような日になりましたが、そうした時に道元禅師がおっしゃった言葉があるんです。これは道元禅師の月見像にあるものです。道元禅師はお月見が大好きな人でした。十五夜お月さんです。道元禅師の肖像画はふたつ残っていて、ひとつは宝慶寺にあり、もうひとつは永平寺にあるんですが、ふたつとも月見の像なんです。で、宝慶寺の方の月見の像の上に書いてある言葉を　—　「賛」というんですけど　—　法語の中で唱えさせていただきました。何が書いてあるかなんですが、「気宇爽清なり山老の秋、天井を覰るに驢皓月浮かぶ、一も寄ること無し、一も収めず、任騰騰として粥足飯足なり、活潑潑として正尾正頭なり、天上天下雲自水由なり」という言葉なんです。これが道元禅師像の賛として　—　自筆だろうと言われているものなんですが　—　書かれている言葉なんです。どういうことを述べているかというと、「気宇爽清なり山老の秋」、わが気根も胸中もまるで晩秋の山の気配のように爽やかである。「天井を覰る驢皓月浮かぶ」、その心境はといえば、天を仰いでみると天は天そのもので、まるで井戸を覗いた驢馬がその映った姿を無心に見ているようである。また皓々たる月が無心にその姿を映すようである。月ぬれず　—　これはさとりの境涯なんですけど　—　月は月としてある。それが水に映る。月は月としてあり、その月が水に映る。月は濡れもしない。水に跡もない。まさに没縦跡の世界である。痕跡を残さない世界である。何にもとらわれることのない、あるがままの姿である。「任騰騰として粥足飯足なり、活潑潑として正尾正頭なり」、意図的に動作をせずに、仏法の運びゆくままに、われわれはお腹も足りている。禅宗では古来から、朝はお粥ということになっています。現代の中国においても、朝はお粥なんです。日本はご飯三食なんですけど、中国では朝はお粥のことが多い。「粥足飯足」、十分である。それでいて実に生き生きとして、終始整然としている。それが今の姿である。そして、天の雲が自由なように、「天上天下雲自水由」。「雲水」というのは、修行僧のことを雲水といいますが、雲のごとく流れ、水のごとく行くというのが「雲水」の語源なんです。天の雲が自由なように、地の水が沢になって流れるように、まさに私自身があるがままの雲水そのものである。これが、道元禅師が肖像画に自分で書かれた言葉なんです。

今日はみなさん、きちんと坐って参加してもらったわけなんですが、今日は月見像にちなんで、道元禅師がどういうことをおっしゃっておられたかということを、少しお話しをさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。