皆様おはようございます。

本日は本学の成道会、仏教の開祖お釈迦様を讃える大変奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】な一日を迎えることができました。学生の皆さん、そして日頃からご指導いただいている諸先生、ご参加いただいている皆さんに、連日の接心会ならびに本日の成道会、感謝を申し上げる次第です。

さて、自己紹介を申し上げますと、このたび大谷先生の後を承りまして本学学長に就任いたしました千葉公慈と申します。浅学非才の身でありますが、「任に当たって他に譲りがたし」という言葉の通り、ひとつひとつ、歴史と伝統ある学生教育で世界に名を轟かせている奔驰宝马游戏大厅_电子游戏APP下载-【唯一官网首页】の教育活動のために身を粉にしてお務め申し上げる覚悟であり、またその心づもりで今日もお勤め申し上げました。お式の中で丁寧な法要解説がいただけました。内容はその通りでございます。私からは一言、お釈迦様にちなんだ十二月八日のことをご紹介申し上げたいと存じます。

時は今からおよそ二千五百年前、仏教の開祖お釈迦様は、釈迦国の王子にお生まれになりながら、世の無常、人々がなぜ苦しむのかという問題に悩み、苦しみ、その果てに出家の道を志されたのでございます。時に二十九歳の出家であったということであります。その後、六年間の難行苦行を重ねられました。私は日頃から、ひとつ疑問に思っていることがあります。「難行苦行の六年間」と一言に言われておりますが、その難行苦行を「捨てられた」という言い方が一般であります。そして、苦行を離れてお食事をとられ、さとりを開かれたということですが、しかし私には、この言い方は少し誤解を招くのではないかと思われるのであります。難行苦行を捨てられたということは、決して無駄な六年間ではなかった。いやむしろ、その六年がなかったらさとりが開かれなかったということであります。それではお釈迦様は何を捨てられたのかということです。それは、限られた時間の中では言葉につくすことはできませんし、また、私のような者がお釈迦様のみ心を察することは憚るところがあるのですが、おそらくはこうだと思われます。人間自身が本来持っているさまざまな我欲や迷い、そういったものを徹底的に見つめ直し、そして、その部分を何とか乗り越えたい。その果てにある大いなる本来の自分自身。その果てに待っているのは人間本来の魂のありのままの姿。その辺のところを深く深く追求されたのだと想像しております。

仏典によれば次のような次第でありました。ナイランジャナー川で沐浴をされたシッダールタ太子は、最後の力を振りしぼるようにしてウルヴェーラー村の御神木であるところのニグローダという大木にすがるようにして川岸にはい上がり、その樹の下で深く休まれておりました。ちょうどその頃、ウルヴェーラー村の　—　「軍隊の隊長の娘」とありますが、当時そこには色々な軍人さんがいらっしゃったのかもしれませんが、一般には「村長の娘」と訳されています　—　いずれにせよ、村の有力者の娘のスジャーターという方がいらっしゃいました。彼女は父親の跡を継ぐため、幼い頃から「将来は結婚して子供に恵まれて、立派にお父さんの跡を継ぎたい」と念願していたそうです。幼い頃から可愛い手を合わせて、ニグローダの樹の神様を拝んでいたそうです。樹の神様への捧げものは牛乳粥、牛乳でお米を炊き上げたものでございます。インドではこれを「パヤサ」と申します。今でも尊いお食事として珍重されております。もしもご縁があってインドにいらっしゃった際には、レストランで「パヤサ」とお願いすると、出てきます。このパヤサ、ただの牛乳ではありません。スジャーターさんはその念願がかなって結婚し、立派な子供さんにも恵まれて、「ああこれはニグローダの樹の神様のおかげだ」と、心から喜び感謝していたそうであります。その感謝の捧げものとして、牛乳粥をその日炊き上げていたのでした。牛乳は五百頭のウルヴェーラー村の牛を厳選し、そこから絞ったものを半分の牛に飲ませ、それを絞り、またさらに半分の牛に飲ませ、それを絞り、といったことを繰り返し、生乳、ヨーグルト、チーズ、バター、そして熟成バター、これらを経典では「五つの味」「五味」と申します。このように牛乳を熟成させ、それでお粥を炊いていたのでございます。牛乳は吹きこぼれやすいにもかかわらず、その日に限って、どんなに薪をくべても一滴もこぼれなかったと記されています。スジャーターさんは胸騒ぎがし、そしていつにない心のざわつきを覚えておりました。明け方のことでございます。そこへ、スジャーターさんに仕えているその家の働き手の人たちが、「奥様大変です」と慌てて走り寄ってきたそうです。「どうしたの。こんな朝早くからそんなに慌てて」と答えますと。「樹の神様が降りてまいりました」と報告しました。スジャーターさんは「そんな馬鹿な」と思いながら、「先ほどから胸騒ぎが止まらないのはひょっとしたら何かがあるのかも」と予感されたそうです。結婚式に両親から贈られた結婚祝いの器がふたつあったそうです。夫婦茶碗のようなものでしょうか。その一方に牛乳粥をたくさん盛りつけ、もう一方で蓋をして、頭の上にのせてニグローダの樹の下へと駆け寄って参りますと、なるほど神々しい雰囲気がそこに広がっておりました。スジャーターさんもはっと息を呑んだと言いますが、聡明なスジャーターさんはすぐに、それは立派なお坊様の姿であるということを、人間の姿であるということに気づきました。それでもなお、神々しい姿に胸を打たれたスジャーターさんは、神様に差し出すそのパヤサをその方、お釈迦様へと差し出したのであります。それを静かに受けとると、そこで会話がなされます。スジャターさんはこう仰ったと、ある仏典にはあります。「どうかあなた様の願いがかないますように。」それをいただいたお釈迦様は「あなたの名前は？」「はい、スジャーターと申します。」「ス」とは「汚れなき」という意味、「ジャーティ」は「生まれ」という意味です。「『よき生まれ』、いいお名前だ。あなたに幸せが訪れますように。」こう感謝の言葉を示されたということです。何という美しい会話でありましょう。見知らぬ二人が、お互いに眼をご覧になって、「あなたの願いがかないますように」「あなたに幸せが訪れますように」。人間同士というのはかくも美しい会話が成り立つのであります。私はこれがこの人間社会の、人間同士のやり取りの根本であると考えております。こうしてパヤサを受け取られたお釈迦様は、難行苦行を乗り越え、健康を取り戻し、そしてさらに、坐禅にふさわしい樹を見つけて、森の中へと進んでいかれました。やがて、ピッパラの樹　—　菩提樹と訳されますが　—　そこにどっしりと坐禅を組まれ、十二月の八日、その明け方の、明けの明星がキラリと輝く時、お悟りを開かれたというのであります。お釈迦様のお悟りのいわれは言葉が尽きませんが、このような次第の中で悟られた教えは、「縁起の教え」であったと信じられております。すべての物事は「因」と「縁」で「果」を結ぶ。「縁りて起こる」という教えであります。今日こうしてご縁を結んでいただいて、摂心会という大事な大事な行事を修めることができましたのも、今日お集まりの皆様の、そして広く大地有情のお支えとお導きがあってこそのことであります。今日、この日、お釈迦様の教えを静かに喜び、味わって、また明日からの皆様の生活の中で、そのお知恵を生かしていただければありがたいと存じます。

お話が長くなりましたが、以上であります。